営業利益と営業利益率とは

林教授 説明を続けよう。売上高総利益から販売費と一般管理費を差し引いた差額が営業利益だ。これは商売をすることで生成した価値を表している。商売の成果と言ったらわかりやすいかな。損益計算書の利益の中で最も重要なのがこの営業利益だ。

カノン 売上高総利益よりも重要ですか?

林教授 売上高総利益は販売活動や管理活動の成果を反映していない。商売の成果を表すのは、あくまでこの営業利益なんだ。売上高に対する営業利益の割合である営業利益率も重要だ。

カノン 営業利益と営業利益率では、意味が異なるのでしょうか?

林教授 営業利益は1年間の商売の成果であり金額で表される。しかし金額では商売が効率的に行われたかどうかはわからない。つまり「営業力」はわからない。そこで営業利益率が役に立つ。

営業利益率(営業力)=営業利益÷売上高×100

カノン 営業力って、商売上手という意味でしょうか?

林教授 いい表現をするね。営業利益率が低いというのは、販売や管理の活動にムダが多いことを表している。

カノン 質問ですけど、売上高総利益率が高いほど、営業利益率は高くなると考えていいでしょうか?

林教授 そうくると思ってね。こんな実例を用意しておいたよ。

林教授 この会社は高級メガネチェーンを全国で展開している。損益計算書から、この会社の販売効率がいかに悪いかがわかるだろう?

カノン 本当ですね。売上高総利益率が68%もあるのに、営業利益率はたったの2%しかない! メガネって販売費や管理費がかかるのですね。

林教授 直営店を展開しているからね。売上高総利益の多さは魅力だけど、商品を顧客に届ける販売活動と管理活動に、せっかく増やした価値を使い果たしてしまっている。

カノン 販売費や管理費がかかるって、具体的にどのような状態なのでしょうか?

林教授 まず、直営店の人件費や賃借料が多いことだ。それから直営店を束ねる費用、つまり管理費もバカにならない。それに流行遅れの売れ残り品の処分や、クレームの処理にも費用がかかる。だから売上高総利益が多くても、結果として営業利益はほとんど残らないんだね。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。 以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。