累計38万部超のベストセラー餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林 總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』が9月29日にダイヤモンド社から発売になりました。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしていきます。登場人物は、林教授と生徒の川村カノンの2人。知識ゼロから始めて、いかにして決算書を読み解くスキルを身につけていくのか? 川村カノンになったつもりで、本連載にお付き合いください。

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減価償却は、
19世紀半ば鉄道会社によって発明された

林教授 費用はその会計期間に消費した価値だったね。しかし、この費用の全てが同じ会計期間にお金が出ていくわけではない。次の会計期間に支払われる場合もあるし、前の会計期間に支払い済の費用もある。

カノン 電気料は後払いですし、家賃は前払いですものね。

林教授 それと、もう1つ特殊な費用を知っておく必要がある。

カノン なんでしょうか?

林教授 減価償却だ。減価償却は会計が社会科学に貢献した最大の成果と言っていい。

カノン なんだか大げさですね。

林教授 例えば、リニア中央新幹線の工事費予算は約9兆円とされている。開業は2027年の予定だ。もしも減価償却をしないとしたら、すべての工事費は投資した年の費用となってしまう。だが、90年間使うのなら、この投資は90年間の収益に貢献するのだから、毎年1000億円ずつ費用にすべきことになる。

カノン なるほどね。開通する予定の2027年に9兆円の全額を費用として計上すれば、この年はものすごい赤字になりますね。でも、2028年以降は費用はわずかで多額の売上が計上されますから、大幅な黒字になります。そもそも9兆円の設備が開業後の売上をもたらすわけですから、開通時の費用にするのではなく、営業する全期間の費用にすべきということですね。

林教授 その通り。設備投資は会社の当期の業績とは関係がないからね。

カノン 投資するから将来の売上が増えて利益も増えるんですよね。減価償却をしない会社って、あるんですか?

林教授 意外かもしれないが、減価償却は19世紀半ばに巨額な設備投資をする鉄道会社によって、期間の業績を正しく算定するために発明されたんだ。

カノン ということは、ヴェニスの商人は減価償却をしていなかったのですか?

林教授 そういうことになるね。