――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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今回の米大統領選はビジネス界にとって夢のシナリオをもたらすかもしれない。それは、民主党の穏健派の大統領が選ばれたものの、彼の野心的計画は上院を通過できないというものだ。加えて彼は、しばしばトランプ政権を特徴付けた予測不能の行動を避けるだろう。
勝利を確実にしたジョー・バイデン氏は、これまでの数十年間で最も進歩派寄りの民主党の政策目標を掲げて選挙に臨んだ。その目標には、投資家やビジネス界に対する増税、医療保険制度改革法(通称オバマケア)への公的医療保険のオプションの追加、薬価引き下げ、気候変動対策と労組の影響力拡大に向けた大胆な施策などが含まれている。
こうした政策目標の多くを実現するのに必要な法律は、上院を通過できないかもしれない。ジョージア州の決選投票を含め、まだ確定していない部分があるものの、今回の上院議員選挙は、共和党が優位を保つ結果となりそうだ。財政面の刺激策が追加される可能性は依然大きいが、それは議会民主党が提案していたほどの規模にはならないだろう。
それでもバイデン氏は、大統領令やさまざまな規制当局を通じて、かなりの影響力を行使できるだろう。ただしそれらの措置は、司法当局がより保守派に傾いていることや、中道左派の人事承認に抵抗する上院によって抑制されるかもしれない。