9月27日に開催された『DIAMOND Quarterly』創刊4周年記念フォーラム。特別講演には、ソニー・プレイステーションの生みの親として知られるサイバーアイ・エンタテインメント代表取締役社長兼CEOの久夛良木健氏が登壇した。コロナ禍でデジタル化が加速する中、日本のデジタルトランスフォーメーションは世界からすでに周回遅れだと指摘。その背景にある、日本企業が抱えるイノベーションのジレンマについて、みずからのソニー時代の経験も交えて語った。以下は、その特別講演のサマリーである。
強制的に同時リセットされた世界
いまだ世界で猛威を振るい続ける新型コロナウイルスですが、1年近く続く未曾有の事態を振り返る中で私が痛感していることは、「全世界が強制的に同時リセットされた」ということです。いままで当たり前だと思っていたことや正しいとされていたことが、必ずしもそうではないことを私たちは実感しました。これまでの価値観が大きく見直され、アフターコロナを見据えた新たな価値観「ニューノーマル」が台頭し始めており、20世紀パラダイムの急速な転換が進んでいるのです。
2021年1月に開催される世界経済フォーラムの年次総会(通称:ダボス会議)においても、この「グレート・リセット」がテーマとなっていることをご存じでしょうか。限界を迎えつつある既存のパラダイムに代わる新たな経済社会システムを、世界のトップリーダーたちが必死になって模索しようとしている証だといえます。ちなみに同フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ会長は、「キャピタリズム(資本主義)からタレンティズム(才能主義)への転換期がやってきた。金融緩和でマネーが溢れ、資本の意味が薄れたいま、成功を導くのはイノベーションを起こす起業家精神や才能である。私はそれをタレンティズムと呼びたい」と言っています。
それを踏まえて私は、今回のグレート・リセットは日本がもう一度世界と同じスタート地点に立てる大きなチャンスだと考えています。だからこそ皆さんには、失われた20年を経たいま、世界のイノベーション後進国に陥ってしまった日本の現状を、あらためて認識いただきたいのです。