その中でバイデン氏が国際連携を重視し中国に毅然とした態度で接することは、世界各国が自由資本主義の価値観に根差した公正かつ公平な経済運営を目指すために重要だ。わが国はアジア新興国など国際世論との関係を一段と強化し、米国との連携強化に取り組むべきだ。その中で、わが国企業が総合的な技術力を磨き、より多くの社会のニーズを取り込む力をつけることを期待したい。

トランプ政権と
バイデン氏の対中政策の比較

 対中強硬姿勢をとるとみられるバイデン氏だが、具体的な方策に関して同氏の考えはトランプ氏と異なる。「バイデン氏の対中政策がトランプ政権と変わらない」と論じるのは早計だ。

 トランプ政権は中国の覇権阻止を目指し、「トップダウン」で政策を進めた。同氏は対中制裁関税を発動した(関税障壁)。それに加えて、中興通訊(ZTE)やファーウェイなどに規制をかけ、5G通信機器などIT先端分野での中国の競争力向上を抑えようとした。事実上、半導体の供給を絶たれたファーウェイは事業体制の悪化に直面し、低価格帯のスマートフォン事業を約150億ドルで売却する。

 世界経済を動揺させるほどの強硬な対中政策が可能だったのは、共和党の保守派が、中国に強い姿勢で臨むことができるのはトランプ氏しかいないと腹を括ったからだろう。共和党内には、オバマ前政権の対中政策が中国の台頭を許したとの強い不満と批判がある。

 特に、オバマ前大統領の腹心といわれたスーザン・ライス氏(元国家安全保障担当大統領補佐官)が、習近平国家主席が重視した「新たな大国関係」に理解を示したことは決定的だった。その結果、米国は中国の海洋進出を止められず、南シナ海などで中国の影響力は拡大した。前政権の負の遺産払しょくへの期待や、制裁関税などわかりやすい(数字で示される)方策がトランプ氏への岩盤のような支持につながったことは冷静に受け止めなければならない。

 伝統的に労働組合などを支持基盤とする米国の民主党内には、共和党以上の対中強硬論者がいる。例えば、ペロシ下院議長は中国の人権問題を見逃せば、米国は他国の人権問題を指摘できなくなると述べている。バイデン氏は党を超えた対中強硬派の主張をくみ取らなければならない。

 バイデン氏の発言などをもとに今後の政策運営を考えると、一つのポイントは国際連携だ。同氏はトップダウンではなく、「外交や通商のプロ=実務家」の登用を重視している。その上で同氏は、各国政府の担当者との議論を通して挙がってきた政策を承認し、対中政策を進めるだろう。その発想は、政策を「ディール」として扱ったトランプ氏と異なる。ボトムアップで各国との協議を重視することは、国際社会の連携強化にも重要だ。