コロナ禍は多くの医療機関で医療安全の対策上、大きな混乱が生んだ。折しも、本日から「医療安全推進週間」。「医療安全」のパイオニアして全国的に知られる名古屋大学医学部附属病院副院長で患者安全推進部教授の長尾能雅医師らは、どのように対応したのか。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
病院における患者安全は
人体における「免疫」の働きと似ている
長尾能雅氏(名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部教授/医療の質・安全学会理事長)は、日本の医療安全のパイオニアの一人として知られている。
「当院の患者安全推進部では、スタッフ全員がインシデントレポート(現場で起きた、事故につながりかねないインシデントについて報告し、医療事故・医療過誤防止に生かす)を読んで、自分が大事だと思ったことに投票する仕組みになっている。どのレポートを重視するかはスタッフの職種や経験によって違う。現場の職員は、院内の至るところでリスクを見つけ、レポートして提示する。それを私たちが読み、対応することで、医療の質の向上と安全の確保が実現する。全職員がプレーヤーになり得るという点において、患者安全は人体における『免疫』の働きと似ている」
2019年5月の取材に対し、長尾氏はこう語った。名大病院の患者安全推進部は、医師、弁護士、看護師、薬剤師、システムエンジニア、事務職員などからなる多職種連携チームである。