ファーストリテイリング傘下のユニクロは11月13日、著名ファッションデザイナーであるジル・サンダー氏とコラボした秋冬物の限定商品の販売を開始。前日の記者会見には、女優の宮沢りえさんが登壇してアピールしていた。

 そして迎えた販売開始当日、JR名古屋駅横のJRゲートタワーにあるユニクロ名古屋店には、開店直後から客が殺到。ファストリの広報担当者によると、自社製のマスクを発売した際は同店に約600人が集まったが、今回はそれを超える約2000人の客が集まった。にもかかわらず、入場制限をせずに客を店内に入れたのだという。

 その結果、店内は“3密”どころではないほどに客が密集した状態となり、マネキンの台座のガラスが割れた。ツイッターでは「床にガラスが散らばり、子供は泣いているし地獄だ」「服が床に散らばり、他の客が押しのけて来る」「マネキンの着ていた服が脱がされてすっぽんぽん」などの“惨状”を伝える投稿が相次いだ。

 客にはマスクの着用を求めたというが、マスクの効果は完璧ではない。コロナ対策上リスクが大きかったことは明らかである上、幸いけが人はいなかったものの、ガラスが割れるほどの人だかりだったのだから、物理的な接触やトラブルでけが人が発生していてもおかしくない状況だったといえる。

 ファストリの広報担当者は取材に対し、「こちらの落ち度で申し訳ない」と述べたが、「大量の客が集まることを前提に今回の企画をしたわけではない」と語った。

 ファストリの柳井正会長兼社長は今年4月の記者会見で、コロナの感染拡大を「戦後最大の人類の危機だ」と表現した。だが、むしろユニクロ内部の店舗オペレーションや感染対策こそ危機的な状況にあるのではないか。

 政府の緊急事態宣言によって4~5月、小売店や飲食店は臨時休業や営業時間の短縮を余儀なくされ、日本経済に多大なダメージを与えた。今後“ウィズコロナ”を意識して経済活動と感染対策の両立を目指すのであれば、人が集まりやすい小売店や客がマスクを外す飲食店では、より効果的かつ合理的な感染防止の取り組みが求められることは言うまでもない。

 であるにもかかわらず、冒頭のユニクロのように首をかしげざるを得ない非合理的な“対策”に奔走する大手企業は、残念ながらほかにも存在する。