前著は『ヤフーの1on1』というタイトルで、ヤフーがそれまでにやってきた1on1について解説したものでした。今回の本は、ヤフーで2012年から続けてきた1on1をベースにしながら、少しでも普遍的な内容にしようと考え『1on1ミーティング』という、些かそっけない、即物的なタイトルにしました。

「組織開発」や「経験学習」など
背景理論の専門家との対談も収載

 私たちがヤフーで実践してきた1on1が「手本だ」などと言うつもりは毛頭ありません。むしろ、まだまだ改善していくべきところがたくさんある、と考えています。ただ、ヤフーにおいて、2012年以降、対話の量が格段に上がったことは事実ですし、『ヤフーの1on1』には、一定の影響力があったことも確かだと思います。この間に、私たち自身の1on1に対する考え方で変わってきたところもあります。考え方が進化した、と言ってもよいかと思います。

『1on1ミーティング』では、私たちが考える1on1についてあらためてお伝えすることを中心としていますが、自説への固執に囚われぬよう視野を広げるべく、背景理論の専門家との対談もまとめました。

「組織開発」の視点から中村和彦・南山大学教授に、「経験学習」の視点から松尾睦・北海道大学大学院教授に、「カウンセリング」の視点から渡辺三枝子・筑波大学名誉教授に、それぞれ有益な指摘と示唆をいただいています。もう一人、ガンバ大阪で長年にわたりコーチを務め、現在はJ3のカマタマーレ讃岐のGM(ゼネラル・マネジャー)をされている上野山信行さんには、「コーチング」の視点から、貴重なご意見をいただきました。これらにより、私たちが考えてきた1on1について、客観的な価値と効能が浮き彫りになったのではないかと思います。

 また、実践を重ねる企業の方々に苦労や工夫をうかがっているのも、本書の大きな特徴であると思います。

・グループ10万人で1on1を進めつつあるパナソニック
・強力な商品を持ちながらも、新たなプラスアルファを求めて進む日清食品
・上意下達のコミュニケーションを抜本的に変えようと目論む静岡銀行
・看護の現場に1on1を導入した二つの病院

 いずれも、なぜ1on1が必要なのか、それについて検討を重ね、トライアルから本格導入へと、それぞれ独自のプロセスと運用を進めて定着に至った組織の事例です。