「1on1ミーティング」とは、上司と部下とのあいだで定期的に行われる1対1の対話のことで、部下の育成や組織活性化につながるとして注目を集めています。なかでも、本間浩輔著『ヤフーの1on1』(2017年3月発行、ダイヤモンド社刊)は累計6万部を突破し、ロングセラーとなりました。それから3年半、吉澤幸太氏との共著で第2弾となる『1on1ミーティング』を11月下旬に上梓しました。そこに込められた思いをまとめました。
対話によって部下のやる気を引き出し
個人と組織の仕事の質を上げる
1on1ミーティングは、今では、すっかり会社の中での上下間コミュニケーションの手法として定着したように思います。
目の前の部下に関心を持ち、対話によってそのやる気を引き出し、成長を促し、ひいては個人のみならず組織の仕事の質を上げていこう、というのが1on1の考え方です。
私たちは『ヤフーの1on1』を2017年3月に刊行しましたが、それも1on1ミーティングが産業界に広がるきっかけのひとつになった、という声を聞きます。しかし、1on1は、決して私たちが発明したものではありませんし、ヤフーのオリジナルの手法でもありません。
刊行から3年半たち、さまざまな企業が導入するようになるなど、状況は大きく変わりました。ただ単に上司と部下とが1対1で話すことを、すなわち1on1と称するケースもあるようです。また、それが「業績面談」と同じように運用されているケースもあると聞きます。
1on1をやってみようと取り組みを始める企業が増えていくことは、私たちにしてみれば「仲間」や「同志」が増えるようなもので、もちろん歓迎すべきことです。
ただし、それが本当に部下の成長に資する、あるいはやる気を引き出すことにつながるのだろうか、と思うような事例もなくはありません。
コーチングやカウンセリングの知見をベースにして、そこで使われる傾聴や質問といったテクニックにばかり目がいき、「いい1on1選手権」に陥っていないでしょうか。「部下のやる気を引き出し能力を伸ばす、そして組織に成果をもたらす」という本来の目的からかけ離れてしまっていることはないでしょうか。
私たちが注文をつける立場にないことは重々承知のうえですが、せっかく時間を割いて1対1の対話をするのなら、部下のために、また上司のために、有益な時間であってほしい。
そのような考えも背景にして、あらためて1on1について、その基本的な考え方を整理したいと思うようになりました。それが、11月24日に刊行された『1on1ミーティング』を書いた理由です。