「こんまり」こと近藤麻理恵は、今や「片づけ」プロフェッショナルとして、世界で最も知られる日本人の一人となりました。2015年雑誌「TIME」の「世界で最も影響力のある100人」に選出、2019年には彼女独自の片づけ法「こんまりメソッド」をテーマにしたドキュメンタリー番組が動画配信サービス「Netflix」でシリーズ化。「KonMari~人生がときめく片づけの魔法~(Tidying Up with Marie Kondo)」は世界190の国と地域で配信されました。同年にはテレビ番組のアカデミー賞とも言われる「エミー賞」で、2部門ノミネートされました(これは日本人初の快挙だそうです)。
麻理恵さんの世界進出の戦略を手掛けてきたのがプロデューサーであり夫でもある私、川原卓巳でした。日本で活動していた彼女が、どのような流れで世界を舞台に活躍することになったのか。
初めて書き下ろした書籍『Be Yourself』では、麻理恵さんと二人で歩いてきた「自分らしく輝く」ための道のりをご紹介しています。特別なスキルや努力は必要ありません。あなたが、あなたらしく戻ること。そのためのステップをまとめました。連載3回目はNetflixの番組制作現場で、プロデューサーである僕が特にこだわったポイントについてお伝えします(構成:宮本恵理子)。

こんまりがNetflixの番組で輝けたのは「自分らしく」いられたからNetflixの「KonMari~人生がときめく片づけの魔法~(Tidying Up with Marie Kondo)」はテレビ番組のアカデミー賞とも言われる「エミー賞」で2部門ノミネートされた

片付けは「Life Changing Method(人生を変える手法)」

 前回の記事(「大量の仕事を手放したら入ってきた、こんまりNetflix進出の裏側」)で、僕は大量に寄せられた麻理恵さんへの講演や取材の依頼を99%カットしたとお伝えしました。

 徹底して引き算をすると、余白が生まれます。

 空白ができると、新たにチャンスが降ってきた時にもすぐに動くことができる。

 僕たちの場合、それが動画配信サービス「Netflix」で麻理恵さんのオリジナル番組をつくるというプロジェクトでした。

 実はアメリカで本が売れてから、20社以上の制作会社から番組のオファーが来ていました。どこも魅力的な条件を提示してくれたのですが、最終的に僕たちは Netflixと組むことに決めました。

 それは、Netflixが最も多くの人にこんまりメソッドの価値を伝えられると感じられたから。こんまりメソッドの真の価値を理解してくれているとも感じました。

 番組の制作責任者であるゲイル・バーマンさんは、開口一番にこう言いました。

「これは単なる片づけ法じゃない。Life Changing Method(人生を変える手法)よ」

 かつて僕は、麻理恵さんの本が出てすぐに読み、まったく同じ感想を彼女に伝えたことがあります

「これは片づけじゃなくて、人生を切り拓くための本だね」と。当時の僕と同じ感想を、ゲイルさんも抱いてくれていた。鳥肌が立ちました。