本来の姿からズレた時は?
もちろん、うまくいく時ばかりではありません。生きていると、人はいろいろなバイオリズムに影響されます。
本来は片づけの魔法を誰よりも愛し、広く世界に伝えたいと思っているはずの麻理恵さんでも、疲労やストレスから彼女らしくない理不尽なそぶりや、逃げとも思えるような主張をしたことがありました。
彼女がそうなるのは、本来の姿からズレてしまっているから。そんな時はこう声をかけることもあります。
「今の麻理恵さんは、心の位置があまり良くない」
本来、あるべき位置に心がない。
心の置き場所がズレていると、いつもなら果たせる役割も果たせなくなる。
もとの位置に戻そうよ、と。
彼女の甘えやわがままを責めたり、否定したりはしませんでした。
でもこう伝えただけで、彼女はハッとした顔をして、しばらくするとまた自然と輝きを取り戻していったのです。
「卓巳さんに言われて一番うれしかったのは、あの時の言葉だった」
僕の指摘を、彼女は後でこう明かしてくれました。
僕は、彼女の一番の理解者として、そしてプロデューサーとして、近藤麻理恵という才能が本来の魅力のまま輝ける環境をつくることだけに集中してきました。
結果、Netflixで配信されたオリジナルシリーズ「KonMari~人生がときめく片づけの魔法~」は190の国と地域で配信され、Netflixで2019年に最も視聴されたドキュメンタリー番組となったのです。
さらにはテレビ番組のアカデミー賞とも言われるエミー賞で2部門ノミネートされるという大変な栄誉をいただきました。