「まったく知られていませんが、実は慢性的な肩こりや腰痛などのからだの不調の原因は、手が縮こまって、短くなっていることにあります。
現代人の多くは、手が短くなっています。その短くなった手をすっきり伸ばさない限りからだの不調はなくならないのです」と語るのは、アスリートゴリラ鍼灸接骨院の院長をしている高林孝光さん。
高林さんは、日々多くの患者さんの施術をするなかで、知らない間に手が短くなっている人がほとんどだと気がつきました。
そして手を伸ばす治療法を確立。多くの患者さんだけでなく、種目柄、手の障害が多いバレーボールのジュニアオリンピック東京代表トレーナーに抜擢されたり、車椅子ソフトボール日本代表のチーフトレーナーを任された経験も。
ダイエット、自律神経失調症など心と体の悩みの相談件数は5万件を超えています。
本連載では、高林さんの新著『1日7秒手を伸ばしなさい』に紹介されている、肩こりや腰痛といった慢性的なからだの不調を治す方法を特別に抜粋し、ご紹介していきます。
(構成・井上健二 イラスト・山口正児)

9割の人が知らない、手を伸ばすと腰痛がラクになる理由

手を回すと、縮こまったインナーマッスルにも
アウターマッスルにもストレッチ効果を発揮する

 私が提案している手を伸ばすための「基本体操」は、肩の前回し、後ろ回しをラッキーセブンで7秒で7回ずつ行うだけ。それで短くなっていた手が伸びてきます。

 なぜ手を回すだけで、手が伸びるのでしょうか。

 その秘密は関節と筋肉の作りと性質にあります。関節とは、骨と骨が接するジョイント。運動は、筋肉が関節を動かすことで行われています

 関節内で、骨と骨は直接接しているわけではありません。骨はとても硬い組織なので、骨同士がじかに接すると衝撃が強いですし、関節がスムーズに動けないからです。

 そこで骨の先端は、軟骨というクッション機能が付いた軟らかい組織で覆われています。さらに骨と骨の間には適度なスペースが設けられており、ダイレクトに触れ合わないような作りになっているのです。

 手を使う機会が多くて緊張すると、肩の関節内で骨と骨が近づきやすくなります。その結果、手が短くなるのです。

 手を回して緊張をほぐすと、肩の関節内で骨と骨の間に適正なスペースが生まれます。それが手が伸びる理由の一つです

 肩関節以外に、ひじや手首の関節でも、くっつきすぎた骨と骨の間が離れてくれるので、それだけ手は伸びやすくなります。

 手を伸ばして関節のコンディションが良くなると、動く範囲である可動域が広がって、筋肉は動きやすくなり、より緩みやすくなります。

 手を回すと伸びる理由は、筋肉の性質にも関わります。

 筋肉は縮むときに力を出し、その後は元の長さに戻ります。

 ところが、使いすぎや強い緊張下では、筋肉は縮んだまま元に戻りにくくなり、短い状態で固定される性質があります。手を使いすぎたり、緊張したりしている状況では、手の筋肉は短くなっているのです。

 手を回すと、縮こまったインナーマッスルにもアウターマッスルにもストレッチ効果を発揮しますから、短くなったまま元の長さに戻れなかった筋肉が緩み、本来の長さを取り戻します。それもまた手が長くなる理由なのです。