キャベツはラップにくるんでテープを貼る。売れ残ればラップを取り除いて半分に切ってまたラップにくるんで……。マニュアルにとらわれ、作業に手間ばかりかかっていたのだ。キャベツは鬼葉を取って裸で置くだけのほうが、鮮度感が出る。多くの本の中から使えそうなマニュアルを見つけると、利用できるところをダイジェストして独自のものを作り上げた。

 鮮魚では小パック化を進めた。小家族化、単身化は都心だけで進んでいるわけではない。鹿児島では特に高齢化が進み、ひとりで暮らすお年寄りは少なくない。ひとりで食べ切れる量のパックをそろえ、値頃感を心がけた。バックヤードでの作業は増えたが、これも顧客の期待に応えるためだ。

経営危機スーパー改革はトイレ掃除から、遠巻きに見ていたスタッフも動き始めた清川照美(きよかわ・てるみ)/株式会社タイヨー取締役副社長。元東証二部上場の㈱タイヨー2代目の妻として主婦業に勤しんでいたが、同社の監査役や取締役として経営に参画するようになる。関連会社の代表取締役として、新業態の開発や既存店の立て直しに貢献。2013年、MBOを進めてタイヨーのスピーディーな社内改革を実現させた。6年半で300億円の借金を返済するなど経営手腕を発揮した。2019年慶應義塾大学大学院経営管理専攻の修士課程修了。現在も司令塔として管掌、タイヨーの改革を進めつつ、ケア・サポーターズクラブ鹿児島会長を務めるなど地域貢献にも尽力する。

 タイヨーでは衣料品を扱う店も多い。そこでも在庫は山のようになって売場まであふれ、「これでお客さまはどうやって買い物を?」(清川氏)と思うくらい、ぎゅうぎゅう詰めで商品を抜き取れないほどだった。

 調べると在庫の4割が、半年以上動かずに眠ったままになっていた。「まるでわが社の店はメーカーさんや卸さんの倉庫代わりでした。要らないものを押し込まれ、売れないから値引きするので利益は取れない。うまく使われていたんです」(清川氏)。清川氏はアパレル部門でも自ら部長を兼任すると、在庫をバッサリ処分し、バックルームの在庫はゼロになった。

 また、必ず週に1度は代表的な店を回って、ディスプレイを指導した。売場を歩く中、これはと思う商品をスタッフとともにピックアップしてマネキンに着せ、季節のステージを作りあげる。できあがったステージをスマホで撮影して他の店に送る。各店でそっくりまねすることで、効率よく衣料品のアピールができるようになった。(つづく)