2021年から米国を率いる新大統領のジョー・バイデン氏(厳密には、トランプ陣営はまだ負けを認めておらず、1876年以来の下院での投票に持ち込まれる可能性も残っています)。私は2001年からホワイトハウスや国務省、財務省など、米国の政権の中枢で政策の立案・実施を担う現役官僚やOB/OGたちと仕事をしてきました。これら先、世界はどう変わるのか、本連載では私の著書『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で紹介した米国と中国、世界、そして日本の2021年以降の行く末についてご紹介しましょう。連載5回目となる今回は、これまで米国の頭脳として政府中枢で働いてきたワシントンのエリートたちの行方について。かねてから腐敗していると糾弾されてきたが、今後は新しいエリートが米国の政策立案を担うようになりそうです。

2021年以降のバイデン政権を率いるのは「新しいエリート」だPhoto: Adobe Stock

米国の頭脳は「新エリート」の手にわたる

「あなたは米国民なのだから、米国のために働いてほしい」

 2015年、私は民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員からこんな手紙を受け取りました。当時所属していたシンクタンクからも、彼女がそれぞれのシンクタンクに送った手紙のコピーと彼女に米国の製薬会社との癒着を指摘されてブルッキングス研究所を辞職した研究者に関する記事のコピーが送られてきました。

 オバマ政権時代、ワシントンのシンクタンクは国益ではなく研究資金を拠出する企業に都合のいいレポートを書くと批判されていました。その企業の中には海外の企業も含まれており、オバマ大統領も批判していました。

 ウォーレン上院議員の指摘は、「政府に提言するような職に就いているのであれば、何よりも米国の国益を考えて働くべきだ」という至極まっとうなものでした。米国の格差拡大や国力低下という惨状は、一部の人間が公共の利益よりも自分たちの利益を優先した結果なのだから、それを是正すべきだというのです。