人種差別問題で期待されるケネディの孫

 誰が大統領になったとしても、2021年以降の米国のリーダーは新型コロナウイルス問題と人種差別問題という米国にとって大きな2つの課題を解決させなくてはなりません。

 こう書くと、まるで民主党候補が2020年の大統領選挙に勝つような印象を受けるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。

 というのも、1913年に有罪となった黒人ボクサーのジャック・ジョンソン氏に大統領の恩赦を与えたのは、オバマ大統領ではなくトランプ大統領でした。トランプ大統領は決して黒人を敵だとは思っていないのです。2020年夏の共和党大会でも、トランプ大統領が2018年に減刑し、2020年には恩赦を与えた黒人女性のアリス・マリー・ジョンソン氏(白人による差別で終身刑となったと言われていた)が登壇して演説をしました。

 本項では、2025年以降の米国で誰がリーダーになるのかという少し先の未来について触れたいと思います。将来の大統領候補となりそうな人物を共和党と民主党、それぞれから3人ずつ挙げてみました。

 現時点で取り沙汰されているのは、共和党は2020年はトランプ大統領が再選を果たすことを前提に、マイク・ペンス副大統領とマイク・ポンぺオ国務長官の名前が挙がっています。また女性の大統領候補としては、ニッキー・ヘイリー前国連大使も「反中共」という話から注目が集まっています。彼女は「中国が問題なのではなく、中国共産党が問題なのだ」と言って全米で50万人の署名を集めた剛腕の女性です。

 一方、民主党は2020年の予備選にも出ていたエイミー・クロブシャー上院議員、ピート・ブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長の2人が予備選の序盤で健闘したこともあり、有力視されています。また、これから先もくすぶり続けるであろう人種差別問題への対応を考えると、私は下院議員のジョセフ・パトリック・ケネディ三世も注目すべきだと思っています。

 両党とも、最初に挙げた2人は有名ですから、ここではそれぞれ知名度の低い3人目の候補者について紹介します。

 共和党のニッキー・ヘイリー前国連大使はインド移民の娘であり、白人男性と結婚して2人の子どもがいます。1972年生まれの48歳。強い保守派であり、米国として初の女性大統領を目指してほしいと思っています。

 一方のジョセフ・ケネディ三世は40歳で、司法長官になったロバート・ケネディ氏の孫です。ケネディ家にはジョン・F・ケネディ大統領の一番下の弟だったテッド・ケネディ氏に、マサチューセッツ州の上院議員だったあとを受けた息子のエドワード・ジュニア氏がいるなど、脂の乗った政治家がいます。

 しかしここでは人種差別問題という点で祖父の名演説を踏まえて、ジョセフ・ケネディ三世に期待したいと思います。彼は2020年の上院議員の民主党予備選で現職に負け、ケネディ家で初めて落選した政治家でもあります。しかしまだ40歳ですし、ナンシー・ペロシ下院議員の支持もあります。「選挙に強いが死の悲劇が続くケネディ家」において、選挙で負けたことをバネに成長することを期待しています。

 誰が2024年の選挙で大統領に選ばれても、トランプ大統領が2016年からつくり上げてきた方針が変わることはありません。唯一、候補者によって大きく変わるのは、黒人やほかのマイノリティーへの対応といった社会政策くらいでしょう。