心を癒やし幸せな気分にするホルモンといわれる「オキシトシン」は、ストレス対策や肥満治療にも有効であるとされ、注目されている。折しも、新型コロナウイルスの感染拡大は「第3波」を迎えており、改めてストレスや肥満への懸念が続いている。そこで、世界のオキシトシン研究をリードする福島県立医科大学病態制御薬理医学講座の前島裕子特任教授に、オキシトシンの効果や可能性について聞いた。(医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)
悪いのは「愛情ホルモン」というレッテル
実はもっと奥深い
オキシトシンは、脳の下垂体から分泌されるホルモンである。女性が妊娠・出産・授乳する時に多く分泌される。心を癒やし、幸せな気分にする効果があるため「愛情ホルモン」として有名だ。
実はオキシトシンは、哺乳類の雌のみでなく、雄も持っており、そのホモログ(進化系統上で同一の祖先から派生した、類縁性の高い器官や組織、遺伝子などの一群。塩基配列が非常に類似し、共通の遺伝子から由来している可能性が高いことをホモロジー=類縁度が高いという)を含めれば、昆虫、魚類、爬虫類、鳥類まで持っているペプチド(タンパク質とアミノ酸の仲間)である。
つまり、オキシトシンは哺乳類に至るまでの進化の過程で保存され、進化に合わせてその作用も進化してきたと考えられ、生物が生きる上で、また「種の保存」ということからも非常に重要なホルモンなのだろう。