今、最も注目を集める急成長企業ワークマン。横浜・桜木町にオープンした次世代店舗「#ワークマン女子」1号店には、3時間の入店待ち行列ができた。12/28「日経MJ」では「2020ヒット商品番付(ファッション編)」で「横綱」にランクインした。そんなワークマンは「しない会社」だ。
◎社員のストレスになることはしない
◎ワークマンらしくないことはしない
◎価値を生まない無駄なことはしない
とりわけ「頑張る」はしないどころか禁止だ。それでも業績は、10期連続最高益を更新中。
「データ活用ゼロ」だったワークマンが、どうやって自分の頭で考える社員を育てたのか。
ワークマン急成長の仕掛け人である土屋哲雄専務が、Amazonに負けない戦略など4000億円の空白市場を切り拓いた秘密を語り尽くした初の著書『ワークマン式「しない経営」』が話題沸騰。10/26と12/7に日経新聞にも掲載された。なぜ、「しない経営」が最強なのか?
スタープレーヤーを不要とする「100年の競争優位を築く経営」とは何か。
ワークマン急成長の仕掛け人、土屋哲雄専務が初めて口を開いた。

ワークマン急成長の仕掛け人は以前、三井物産の「ジャングル・ファイター」だったPhoto: Adobe Stock

肩書きが変わっただけで
時間単価が2倍に

ワークマン急成長の仕掛け人は以前、三井物産の「ジャングル・ファイター」だった土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を『ワークマン式「しない経営」』で初めて公開。本書が初の著書。

 2006年には、三井情報開発株式会社(現・三井情報)の取締役執行役員に就任し、ゼロからコンサルティング事業を立ち上げた。コンサルツールの開発と体系化、セミナー販促から訪問営業までを一人でやった。

 システムエンジニアにコンサルタントという名刺を持たせ、パワーポイントを使ったプレゼン技術、自信を持ってクライアントに説明するトーク術を教えた。

「コンサルは知らないと言ってはいけない」
「コンサルは言いきれ」
と社員に繰り返し言っていた記憶がある。

 結果として同じ社員の時間単価が2倍強になった。
肩書きが変わっただけで(もちろん多少のスキルアップはしているが)、これほど評価が変わるのかと驚いた。

 コンサルタントとしても扱う分野は絞り、国際会計基準、ITガバナンス、IT等資評価などの制度導入についてクライアントを指導していた。

 国際会計基準については、中央大学会計大学院の高田橋範充(こうだばし・のりみつ)教授(当時)に押しかけ、弟子(自称)になった。

 会計の「か」の字も簿記の「ぼ」の字も知らなかったが、国際会計基準の「概念フレームワーク」(会計思想)を2年間勉強した。

 当時の日本の会計基準は税法に引きずられ、思想性が希薄だった。海外にはそれぞれの経済実態に基づく会計フレームワークがある。イギリス、アメリカ、ドイツに代表される欧米の3つの会計思想の違いを教授から教わった。国際会計思想を学び、会計ではなく、経営はどうあるべきかを考えるヒントを得た。

 そうした知識を活かしながらコンサルティングをしていた。
 ゼロからスタートした三井情報のコンサル部門は100人規模になり、顧客は日本を代表する大企業2社と中堅企業多数だった。