ワークマン女子コレットマーレ店ワークマン女子コレットマーレ店 Photo by Rumi Souma

ワークマンが10月16日にオープンした新業態「#ワークマン女子」が連日大盛況だ。一方、「女子」と冠したネーミングへの批判もSNS上で高まり、“ジェンダー炎上”も起きた。ワークマンが女性向け店舗を作らざるを得なかった背景とは。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

ワークマンの新業態「#ワークマン女子」
3時間待ち大盛況と“ジェンダー炎上”

 ワーク“マン”なのに“ワークマン女子”――。名前からして自己矛盾を起こしている作業服大手ワークマンの新業態が、オープン直後から異様な盛り上がりを見せている。

 10月16日、横浜市中区の商業施設コレットマーレに、ワークマンの新業態店舗「#ワークマン女子」がオープンした。

 ここは本来の主力製品である作業服を取り扱わず、女性向けの製品を増やした実験店舗だ。売り上げは女性向けが4割、ユニセックス2割、男性向け4割を想定した品ぞろえになっている。

ワークマン女子あしもと倶楽部で映える、床にはイラストが Photo by R.S.

 店内の装飾も女性を意識。Instagram上で流行している「#あしもと倶楽部」(足元スナップをアップするハッシュタグ)に対応したフロアや、SNSにアップするためのフォトブースを設けるなど、従来のワークマンの店舗にはなかった仕掛けが満載だ。

 16日のオープン当日はなんと入店が3時間待ち。翌日は整理券を配って入場制限を余儀なくされるほどの客が殺到した。

 ワークマンは18年から始めた一般向けの新業態「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」が大ヒット。ワークマンプラスの客層は、作業服を購入するプロの客が6割、一般客が4割だ。

 中でも売り上げを牽引したのは女性向け商品である。今ではワークマンプラスの店舗の売り上げの約3割が女性向け商品だ。

 しかし、今回の#ワークマン女子には、当の女子たちから不満の声が数多く聞こえてくる。SNS上では「“女子”とつけるなんてジェンダー観が古いのではないか」「原点に立ち戻ってほしい」といった批判が飛び交ったのだ。

「女子」とつけることでバッシングを受ける“ジェンダー炎上”は、過去にも読売新聞オンラインの「美術館女子」など多数の事例がある。

 このネーミングが決まる前に、ワークマン社内でももちろん議論はあった。

「ワークマン」の名前を冠した理由には、ワークマンプラスの名付けの成功体験があった。当初は別名をつけるつもりだったが、大手ディベロッパーから「『ワークマン』の知名度を生かすべきだ」と言われて名前を残した結果、ワークマンプラスがブレークしたのである。

 もう一つの理由は、「#ワークマン女子」が数年前からSNS上で自然発生して広まっていた言葉であり、一定層に認知されていたからだ。SNS上で既に使われている表現に乗っかったのだ。

 ただ、#ワークマン女子というネーミングに批判が殺到していても、ワークマンの社員は「『ワークマン』も、創業当時は変な名前だと思った人は多かったはず。すぐにみんな慣れますよ」と飄々(ひょうひょう)としている。

 ジェンダー炎上してもワークマンがどこ吹く風なのは、#ワークマン女子の誕生を急がざるを得ない事情があるからだ。ワークマンにとって「女性客の反応」よりも無視できない現場の問題が急浮上しているのだ。