そして、「全民健康保険ネットワークシステム」は、12時間以内に全国の診療データの集計や分析が出来るようになっており、特定疾患の増加にすぐに対応できる仕組みが出来上がっている。

 たとえば今回の新型コロナウイルスが特定地域で増加すれば、その傾向が報告され行政側が適切な対応を行い、パンデミックを防ぐことが出来るようになっている。新型コロナウイルスが発生する前から、このような情報を的確に掌握する医療インフラが構築されていたのだ。どこかの国が、各保健所の情報をFAXで手集計しているのとは次元が違うのである。

台湾医療ネットワークは
バイオビジネス発展の鍵

 このように台湾の全民健康保険ネットワークシステムは、便利なだけでなく国民の健康状態および医療傾向をも把握している。そして、これらの医療情報は、台湾衛生福利部中央健康保険署のビッグデータに集約されている。このデータは学術方面に開放されており、医療バイオ関係企業、研究所のR&D(研究開発)に有効に利用されている。

国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦国会議員に読ませたい 台湾のコロナ戦
藤 重太
定価1540円
(産経新聞出版)

 今後、IT技術、AI技術がさらに進歩すれば、病歴や投薬歴などと疾患発症の因果関係の解明や多くの治療薬、治療方法、そしてワクチンなどの開発にも役に立つだろう。台湾が、次世代の国家産業戦略のひとつとして「バイオ医療産業」を掲げているのも納得できる。日本ではあまり報道されていないが、台湾では11月から国民2万人の参加者を募って新型コロナワクチンの臨床実験を行い、すでに開発の最終段階を迎えていると言われている。

 このように今回の「台湾のコロナ戦」は、「見えないファクターX」などに「たまたま」守られたのではなく、過去の失敗経験からの学習、周到な準備と制度改革、法整備、組織改革とITデジタルの活用などによって、確信に近い根拠を築いて国民を守って来たのである。

 日本政府はそろそろ自国の現状を冷静に見定め、何が台湾との差を生んでしまったのかを考えなければいけない時期ではないだろうか。ぜひ、「禍を転じて福となす」としてほしいものである。