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新型コロナ感染防止のため、年末年始の帰省や旅行を自粛するよう会社が要請してきた。しかし理由あって、帰省を強行したA子。年明けに社長から、出勤停止と給料カットの処分と言われてしまった。この処分は妥当か?(社会保険労務士  木村政美)

<甲社概要>
地方都市で工業部品製造業を営む。従業員数150名。
<登場人物>
A子:24歳。地方の大学を卒業後、甲社に事務職として入社。現在会社から近い場所にあるアパートで一人暮らしをしている。
B:甲社の社長。55歳。
C:A子の父親。68歳。2年前に妻が亡くなり現在一人暮らし。一人娘のA子をとてもかわいがっている。以前は会社の総務部に勤務していた。
D:甲社の顧問社労士

「帰省は自粛」という会社からの要請、元気のない父…

「みなさんもご存じの通り、国全体で新型コロナウイルスの感染が拡大しています。幸いにも現在、わが社では感染者はいませんが、感染のリスクを防ぐために今年の正月休みは帰省、旅行等他県への移動は自粛するようお願いします」

 12月上旬、B社長は、全体朝礼で集まった社員たちに対して上記の要請を出した。話を聞いていたA子は、途端に顔が曇った。

「お正月は実家に帰れないなんて、パパに会えないってこと?」

 A子の実家は隣県にあるが、自宅から電車とバスを乗り継いで半日以上かかるため、Cとは昨年の正月に顔を合わせたきりだった。そのかわり頻繁に電話連絡は取り合っているが、ここ最近Cの声に元気がなく、A子はとても心配になっていた。

 B社長から自粛要請が出された日の夜、A子はCにB社長が朝礼で話したことをそのまま伝えた。するとCは

「そうか、会社の要請なら仕方がないな。A子と一緒に鍋やおせちをつつけると楽しみにしていたのに…」

 と寂しそうに言った。その声を聴いたA子は

「パパ、やっぱり私、正月家に帰る。社長には明日話すから」
 
 と決断した。

 A子は翌日、B社長に

「一人暮らしの父親が心配だから帰省を認めてください」

 と頼んだが、B社長は、A子だけに特例で認めるわけにはいかないと要求を突っぱねた。A子は迷ったが、結局実家に帰ることにした。