――財務状況がよくなかったというお話がありましたが、コロナ前までの経営を振り返ってみて、もう少しこうしておけばよかったと思うところはありますか。
これは結果論でしかないですが、(借り入れの部分について)もうちょっと堅実に行ってもよかったかなというのは、正直ありますね。ただ、店舗展開のスピードを上げることに関しては、それはそれでよかったと思うので、間違っているとは思わないのですが……。
売り上げが7割くらいまで減少するような状況は、正直想定していなかったです。売り上げが下がることがあったとしても、9割くらいだろうと見積もっていました。こんなコロナのような日常が揺らぐ出来事があるなんて、一切想像できなかった。そういう意味では、もう少しリスクといいますか、売り上げが下がったときにどうすべきかについて、考えておけばよかったと思います。
――もし、こういう条件がそろっていたとしたら事業を続けていた……と思うことがあれば教えてください。
借り入れが半分くらいだったら続けていましたね。資金的に余裕がある分、借り入れをして2年くらい事業を継続しながら、その間に業態の研究をしてなんとか生き延びようという気持ちにはなっていたかと思います。
コロナ禍の経営は
感情と理屈を分けて考えるべきだ
――倒産という経験を経て、経営者の資質として特に重要だと実感したことは何でしょうか。
感情と理屈、これらを分けて考えることが重要だと感じました。特に今回のコロナに関しては、勢いとか気持ちだけで乗り切れる問題じゃないと思っていて。中には「なんとか気合で乗り切るぞ!」とやっている方もいらっしゃるんですが、やはり苦しそうな印象を受けます。
事業を続けたい、会社が好きであるという気持ちとは別に、その会社が続かないんだという事実を事実としてしっかり受け止めることが、経営者としては重要かなと感じています。
――今は新しい事業を始めているそうですね。
これまでの経験を生かし、年商1億~2億円規模の企業へのコンサルティング支援を行っています。
今回、廃業を決めた際に、「決断が早かった」「なぜそんなに早く決断できたのか」ということを多くの人から言われました。なぜかといえば、最初に申し上げた通り、数字を見て、会社の経営に専念することができていたからです。
ただ、年商1億円とか2億円くらいの会社の中には、社長がいつまでも現場の最前線にいて、決算を終えて税理士から聞いて初めて今年黒字だったと知る、みたいな会社もあります。予実管理ができている会社は少ないのではないでしょうか。
そうした社長が、プレーヤーから脱して経営に専念するためのやり方や必要性について、今後は私自身が伝えていきたいなと思っています。
1987年生まれ、青森県出身。2014年に青森で合同会社イロモアを創業。コワーキングスペースの経営からスタートし、15年に「CAFE 202 青森店」をオープン。事業が軌道に乗り始めた矢先に新型コロナウイルスが襲来。「全店舗閉店、事業清算」という決断を下した。今年11月、その背景をつづったブログをもとにした著書『全店舗閉店して会社を清算することにしました。』を上梓した。