FCEVは今度こそ
存在感を示せるか

 その惨憺(さんたん)たる状況を何とかしたいというのが、水素エネルギーのポテンシャルを信じるトヨタの第2世代ミライと水素バリューチェーンの改善の2本柱というわけだが、このトライを起爆剤として、果たしてFCEVは低炭素車の一角たる存在感を示せるようになるのだろうか。

 それを考えるための前提として、「FCEV+水素プラットフォーム」の特質を簡単におさらいしておこう。

 まずメリットは、水素を消費して走行する段階ではBEVと同様、CO2をはじめ有害成分を排出しないこと。また、燃料補給は液体燃料であるガソリンや軽油ほどには素早くないものの、10分もかからずに実質500kmないしそれ以上の燃料補給ができるというのも、いつ、どういう使い方をするかわからないクルマに圧倒的に向いた特質であろう。もちろんエンジン車に比べて静粛性の高さや低振動といった部分でアドバンテージは持っている。

 それに対し、FCEVが登場して以降、固体高分子型燃料電池を使う自動車の弱点であったエネルギーの利用効率の悪さは、若干の改善はみたものの、根本的な解決にはほど遠いままである。

 標準大気の水素1kgが持っている高位発熱量は142メガジュール。一方、電力量1kWhは3.6メガジュール。割り算をすると、水素1kgは電力量39.44kWhに相当することになる。今回トヨタが発売した第2世代ミライの燃費はWLTC計測で水素1kgあたり135kmから152km。BEVの電力消費率に換算すると、3.42~3.85km/kWh。これは同じようなウェイトのBEVの約半分にとどまる値で、スタックの熱効率は40%前後と推察される。

 次に水素製造。水素1kgを作るのにはいろいろな方法がある。天然ガスや石炭、アルコールなどから水素だけを取り出す改質、アルカリ水に電気を通して水素と酸素に分解する電解、製鉄所や製油所、苛性ソーダなどの生産プロセスの中で副次的に発生した水素を燃料電池に使えるよう高純度化するといったものだ。

 そのうち電気分解だが、2015年頃は水素1kgを作るのに55kWhほどの電力量を投入する必要があった。技術改良が図られているが、今日の実勢値は50kWhを少し超えるくらいとみられる。超低温液化、超高圧への加圧など、気体水素を利用しやすい形態にするには、さらにエネルギーを加える必要がある。

 他の燃料の改質の場合、水素への変換効率はおおむね6割台、アルコールのみ7割台といったところ。最新の天然ガス火力発電所の効率60%に比べると若干のアドバンテージがあり、そこでクルマ側の効率の悪さを少し取り返す形になる。