12月3日、ファクタリング会社(債権買い取り会社)に架空債権3億円を買い取らせた詐欺容疑で「INI」(東京都台東区)というイベント企画会社社長の色川渡容疑者(45)が警視庁捜査2課に逮捕される事件があった。ちょうど東京地検特捜部がドン・キホーテ前社長を金融商品取引法違反(取引推奨)容疑で逮捕したのと同じ日だったため、新聞紙面の扱いはやや割を食った感があるが、ファクタリング会社という金融のプロをだます、いわば「超プロ詐欺師」の存在が垣間見えたという意味で信用情報の業界は決してスルーできない重要な事件といえる。果たしてその手口とはどういうものだったのか。(東京経済東京支社情報部 井出豪彦)

金融のプロをだます
超プロ詐欺師を逮捕

詐欺容疑で逮捕された色川渡容疑者が代表を務めるINIが入居するビル(筆者撮影)

 だまされたファクタリング会社は「H.I.F.」(東京都新宿区)という。2017年11月に「H.I.S. Impact Finance」の社名で設立され、今年2月に社名を変更した。

 代表の東小薗光輝氏は、旅行大手HISの創業者、澤田秀雄会長兼社長が主宰する「澤田経営道場」の2期生で、澤田氏から才覚を認められ、オフィスをHISの本社がある西新宿の「住友不動産新宿オークタワー」内に置いて事業を開始した。18年3月と19年6月にHISなどから合計4億2500万円の出資を受け、同年7月からHISの金融事業の連結子会社となった。今年2月にはMBOで独立し、IPO(新規株式公開)を目指していた。MBO後もHISは約30%の出資比率をキープしていたようだ。

 昨年6月の増資時には伊藤忠商事系の信用保証大手「イー・ギャランティ」(東証1部)と資本提携し、5000万円の払い込みを受けていたほか、「GMOあおぞらネット銀行」も株主に加わった。さかのぼって同年3月にH.I.F.は同行を所属銀行とする銀行代理業の許可を関東財務局から取得したほか、同年5月にはHISを含めた3社で金融業務に係る包括的業務提携に向けた覚書を締結していた。

 さらに今年1月にはGMOあおぞらネット銀の親銀行である、あおぞら銀行と上限50億円の融資枠を契約し、機動的に債権を買い取れる資金力を備えたほか、3月には「帝国データバンク」とも企業与信管理分野で業務提携。帝国データはイー・ギャランティの大株主でもある。このように業界の専門家が集結し、ファクタリング事業を拡大する準備は万端かにみえた。