スタートアップに限らず、経営者の評価基準になることも多い「リーダーシップ」。それは単に人や物を動かすということではありません。上場以降もより大きな会社の成長を志す上で経営者が意識すべきリーダーシップのあり方について、グロースキャピタルの視点で考えます。

Photo: Adobe Stock

旗を掲げて訴求する力

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):ここ最近、グロースキャピタルを運営しているシニフィアンが、レイトステージのスタートアップを見る際に重視するポイントを挙げています。

ここまで、トップマネジメントに関する、誠実さ、柔軟さ、芯の強さ、自分の限界に対する認識、知的体力、健全な野心について考えてきました。我々として重視する項目の順に挙げていますが、今回は最終項目である「リーダーシップ」について考えたいと思います。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):スタートアップに関わる人なら、経営者にリーダーシップがあるかどうかという点は、何らかの形で必ず意識されているでしょう。それほど重視される資質だと思います。

朝倉:まず、「ゼロイチ」で会社を立ち上げるシード期の起業家にとって、「リーダーシップ」は大事な資質であることは間違いないでしょう。私は「旗を掲げる」と表現していますが、周囲を巻き込み、仲間や応援団を形成する資質ですね。何か事業を起こそうとするにしても、何もかも1人でできるわけではありませんし。

事業を始めるタイミングでは、それに必要なリソース、分かりやすく言えば、お金や経営チームを集めてくる力が必要です。それらが最初から潤沢にあるということは、まずないですからね。

小林:会社のフェイズに応じて、経営者に求められる「リーダーシップ」も少し変わってくると思います。その中でもちろん、どのフェイズにおいても、チームの統率力というのは重要なポイントです。

朝倉:会社を支える仲間を含め、必要なリソースを集めるためには、自分たちが取り組む業界の知見や、起業家個人の営業力、技術力といったスキルセットもあった方が良いでしょう。しかし、それ以上に重要なのは旗を掲げる力や大義名分、「こんなことを実現しよう」と訴求する力だと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):その点、レイトステージまで到達した起業家であれば、「リーダーシップ」の最低限のハードルはクリアしているはずです。そうでなければ、会社自体が残っていないはずですしね。

事業が上手く立ち上がってくると、経営チームの戦闘力もどんどん上がっていくはずですが、自分より優秀な人を集め続けることができるか、またそうした人たちが自分について来てくれる状況を作り出せるかどうかが問われます。

あらゆるステークホルダーを説得してこその「リーダーシップ」

小林:レイトステージで長期のグロースを目指すとなると、いろいろなステークホルダーを巻き込み、応援してもらえるだけの説得力がある物言いをできるかどうかが重要になります。ステークホルダーを感化するビジョンを持ち得るかという点も、非常に問われますね。

村上:確かに、初期の「リーダーシップ」は従業員など内部に対する要素が非常に強いでしょう。一方、レイトステージでは社会や政府、ユーザー、投資家、あるいはグローバルへの対外的な「リーダーシップ」が、より求められるようになるわけです。

小林:社会に本当に受け入れられる事業や企業体になっていこうとすると、全く会ったことのない株主やユーザーなどに認められなければいけません。その人たちにも、説得力のある話を何らかの形で伝えていく必要があります。単なる「内輪ネタ」ではない牽引の仕方というのが、大きなカギになると思いますね。

村上:そうですね。上場するだけなら、内弁慶の「リーダーシップ」しか発揮しなくても良いのかもしれません。しかし、事業、会社を大きく成長させていくためには、それだけでは足りません。

朝倉:もちろん、レイトステージに至った過程では、外部を納得させるだけの「リーダーシップ」も一定程度は証明されているとは思います。

*本記事はVoicyの放送を加筆修正し(ライター:岩城由彦 記事協力:ふじねまゆこ)、signifiant style 2020/11/1に掲載した内容です。