選挙にあまり行かないと言われる若者に自分の顔を売ることができ、なおかつ主義主張をわずかでも伝えられる場が失われるのは政治家としても痛い。多くの自治体が成人式の中止を決定できない背景には、そうした政治家の意向もあるのかもしれない。

参加率は減少の一途
問われる成人式のあり方

 コロナの影響はあれども、成人式は今後も続けられていく。だが、成人式への出席率は減少傾向だと中西氏は言う。

「2019年に自治体が行う式典に参加した成人は全体の57.3%です。意外に少ないと思いませんか? 欠席の理由としては幾つかありますが、わざわざ帰省してまで参加したいイベントではなくなりつつあるのでしょう」

 中西氏は成人式への若者の関心が薄れていることに加えて、もうひとつ深刻な問題を指摘する。

「これは分析がないので推測にすぎませんが、参加率の低下には貧富差の拡大が影響しているのではないかと考えています。成人式に出る女性の振り袖着用率は94.4%と非常に高い。しかしレンタルでも平均20万円ほどする振り袖にお金を出せない、あるいは安い振り袖しか着られないとなると、『成人式に行くのが恥ずかしい。行きたくない』ということになってしまいます」

 成人を祝うイベントのはずが、女性同士の振り袖マウントの取り合いのようになってしまっては、本末転倒だ。

 そもそも、自治体が行う成人式の趣旨はどういうものなのか。

「1946年、埼玉県・蕨町(現蕨市)で開かれた『成年祭』が成人式の始まりです。政府はその2年後に成人の日を定め、その後、日本に成人式が定着することとなりました」

 46年といえば、敗戦の翌年である。学徒動員で戦争に行って帰ってこなかった若い青年たちも数多く、彼らへの贖罪と鎮魂の気持ちを持つ人も少なくなかった。そんな中で、皆で成人を祝おうという「成年祭」の概念は全国的に浸透しやすく、だからこそ長く続けられてきたといえる。

「しかし戦後70年以上がたった現在の成人式に、かつてのような意義はすっかりなくなりました。では何のために成人式を行うのか、新しい意義を構築する必要があるのではないでしょうか」

 コロナによる成人式中止という厄災を機に、自治体、振り袖業界ともに、新しい成人式のあり方について改めて考えるべきではないだろうか。

中西昌文氏
京都市出身、1971年生まれ。1995年3月、東北福祉大学社会福祉学部卒業。2016年3月、事業構想大学院大学修了。事業構想修士。