前回に引き続き、『絶対に人生がリセットされる資格』としての医師資格取得について述べていく。
まず、社会人の医学部受験事情について、気になる傾向をひとつだけ上げておこう。それは、医学部の「編入」もしくは「学士入学」の合格者に、東大出身者が顕著に見られる点である。
このことは何を示しているか。もちろん、テストで高得点を採ることに慣れている秀才たちだから、という点も挙げられるだろう。しかし注目すべきなのは、彼らがなぜ、医者になるための回り道をしてきたかと言う点である。
ライバル像その1:東大出身者
東京大学卒業生が他大学の医学部編入、学士入学を受けにいく場合、当然だが彼らは東大医学部以外、多くは理学部、農学部、工学部、薬学部、医学部の医師養成課程以外(健康科学・看護学科)の出身ということになる。
東京大学は、入学時には『医学部』という枠での受験は存在しない。あるのは、医学部への進学が保障されている『理科三類=理3』という科類である。それ以外の科類からの進学は、ごく少数の枠を除いて事実上不可能である。このことは何を示しているか。
受験生事情に詳しい人間でなければ判らないことだが、実は東大入試では「志望を落とす」という言葉がよく使われる。これは、第一希望の科類から、より合格する可能性の高い科類に志望変更することをいう。比較的よく知られているのは文系の頂点「文科1類」から「文科2類」へ「志望を落とす」方法だ。
文1は多く法学部に進学する官僚コースを含み、文2は経済学部への進学が保証されている。大人の目からすれば勉強する内容は随分違うのだが、18歳の秀才たちは自分の偏差値の持ち点と比べ合わせ、受験する科類を変更する。すなわち、学部で大学を選ぶのではなく、東大に入ることを優先させるのである。