ビール店頭棚Photo by Koyo Yamamoto

2020年のビール類シェアは、キリンビールがアサヒビールを抜き去り、11年ぶりに首位奪還を果たした。2位に陥落したアサヒに「大逆転シナリオ」はあるのか。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

キリンが11年ぶりにビール類で首位奪還
王者・アサヒは業務用市場の低迷が痛手

「アサヒさんが数量開示をやめておりますので、シェアは不明でございます」――。1月6日、キリンビールの事業方針説明会。布施孝之社長はこう語りつつも、余裕の表情を浮かべていた。

 ビール大手のキリンビールが、2020年のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)シェアでアサヒビールを抜き、11年ぶりにトップに立った。

 アサヒは20年分からビール類の販売数量を非開示にしている。しかし各社の発表を基にダイヤモンド編集部が試算したところ、20年1~12月のビール類の市場シェアはキリンが37.0%でアサヒは35.4%。1.6ポイントの差をつけてキリンが逆転したのだ。

 ここ数年、キリンは王者アサヒにビール類のシェアで肉薄していた。19年にはキリンのシェアが35.2%と、アサヒとの差を1.7ポイントまで縮めていた。

 そして20年のキリン逆転のきっかけの一因となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大である。

 コロナ禍による外出の自粛や飲食店の営業自粛によって、ビールメーカーの業務用市場が大打撃を受けたのだ。アサヒはビール類に占めるビール比率が6割前後と高い。そのためビール比率が3割程度のキリンビールと比べ、業務用市場の落ち込みの影響が大きくなる。

 加えて宅飲み需要が高まり“勝負どころ”となった家庭用市場では、キリンの新ジャンル「本麒麟」が前年比で32%増(数量ベース)と大躍進した。

 こうした要素が重なり、年間のシェアでキリンが11年ぶりに首位奪還を果たしたのだ。

 アサヒはシェアが低迷していた80年代、沈んでいく様子から“夕日ビール”とやゆされた。今回キリンに抜かれ、このままずるずるとシェアの低下が続いてしまえば、再びそう呼ばれる日も遠くない。

 21年以降に何としても首位奪還を果たしたいアサヒ。では、アサヒが「大逆転シナリオ」を描くとすればどんな手段があるのだろうか。