ポストコロナ「勝ち組」の条件#17Photo by Koyo Yamamoto

コロナ禍による居酒屋の苦境の余波は、ビールメーカーにも飛び火。業務用ビール事業で大打撃を受けているビールメーカーが生き残る条件とは何か。特集『ポストコロナ「勝ち組」の条件』(全18回)の#17では、サントリーホールディングスの新浪剛史社長にポストコロナ時代の展望を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

日本はデフレに戻りつつある
労働の移動ができるかが鍵を握る

――新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人々の消費行動はどう変わったとみていますか。

 2018年ごろから消費は弱まっていました。「人生100年時代」が議論され、将来の不安を抱える人々の意識が貯蓄へと回り始めていたのです。

 その中でのコロナの感染拡大。少し前まではデフレから脱却した感覚があったのですが、現在、またデフレに戻りつつあると感じます。

 巣ごもりが叫ばれることで、例えば、服を買う必要性は下がりましたよね。つまり、生活にかかるコストが安く済む状況です。

 一方、足元で失業する人々が増えており、今後、失業率を注視していく必要があります。これから発展する産業に、衰退する産業からどれだけ人材がスピーディーに移動できるかが鍵。

 移行している間は、デフレになると考えています。それ故、労働の移動がしやすい仕組みを素早く作ることが重要で、これによってデフレになるスピードを落とすことができます。

――どのようにアプローチすべきでしょうか。

 人材が移動する際の手当てや補助金を厚くすることでしょう。日本には素晴らしい中小企業はもちろん、面白いベンチャー企業も出てきています。こうした企業は「経営人材」を欲しています。例えばですが、金融機関は店舗数や人員の削減を行っていますので、人材は間違いなく余っています。

 優秀な人材が移動することで、経済のダイナミズムが復活してくるのです。現在は、人材を“維持”するところに企業はお金をかけていますが、間もなく企業によっては維持することが限界になってきます。