東京の山谷、大阪の西成と並び称される「日本3大ドヤ街」のひとつ「寿町」。伊勢佐木町の隣町で、寿町の向こう隣には、横浜中華街や横浜スタジアム、横浜元町がある。横浜の一等地だ。
その寿町を6年にわたって取材し、全貌を明らかにしたノンフィクション『寿町のひとびと』。著者は『東京タクシードライバー』(新潮ドキュメント賞候補作)を描いた山田清機氏だ。寿町の住人、寿町で働く人、寿町の支援者らの人生を見つめた14話のうち、「第一話 ネリカン」から一部を抜粋・再構成し、2回に分けてお届けする。今回は前編。
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吉浜町公園で友苑の350円弁当を食べようと思っていると、隣のベンチからじょぼじょぼと液体が流れ落ちる音が響いてきた。
友苑とは、東京の山谷、大阪の西成と並び称される横浜のドヤ街・寿町のシンボル、センターこと寿町総合労働福祉会館のはす向かいにあるスーパーマーケットである。