社員の自社株保有は「いいこと」?
そう思えてきそうな多くの理由

 第一に、社員が自分の勤める会社の株式を持つと、株価を上げようとして仕事に力が入る(かもしれない)し、会社の経営に関心を持つ(かもしれない)。また、愛社精神が一層芽生える(かもしれない)し、複数の社員が一緒に自社株を持つことで社員同士の連帯感が醸成される(かもしれない)。

 筆者は、人生で一度だけ勤務先の創業社長から自社の株式を1単元もらったことがあり(当時のグループ社員全員に贈与された)、「本人にとって大変大事なものをくれるのだから、何ともありがたいことだ」と感動したことがある。だから、自社株保有に精神的効果があることを否定しない。

 一方、社長という生き物は、自分の苦労を社員にも共有させたいという理不尽な欲求を時に持つことがある。そのため、「私は毎日、株主と株価のことを気にしているのだから、社員も株価を意識してほしい」と思わないとも限らないだろう。

 また、自社の社員は株主の属性として安定的に株式を保有する株主であり、株主総会では会社側の議案に賛成してくれる株主でもあると期待できる。第三者に株式が買い占められるような事態や、株主の賛否が微妙な議案を通したい場合などに、自社の社員の持ち株比率がそこそこにあることは心強い場合があり得る。少々ひ弱な理由だが、これも分かる。

 さらに、特に株価が好調に推移する場合、自社株のストックオプションで幹部社員の報酬を支払うと、大きな報酬を楽に支払うことができるので、いろいろと好都合な場合がある。

 ストックオプションの行使スケジュールを上手に組んでおくと、幹部社員の転職を抑止する効果が期待できる場合もある。

 もちろん、金融論的に見て株式で社員の報酬を支払う場合の株主のコストはゼロではないのだが、株価が好調であれば文句は出にくい。

 そして、特にサラリーマン社長であれば、何よりも自分自身がストックオプションで高額報酬を得たいだろうから、社員が自社株に関わる仕組みを作っておくことが好都合な場合もあるだろう。

 自分が社長になった場合のメリットを想像しているうちに、何やら社員の自社株保有が「いいこと」のように思えてこないでもない。

 さて、自分が「社長でないから」かもしれないのだが、筆者自身が上場会社の社長であれば、社員に自社株を持たせることに反対する理由が二つある。