偏見とのそしりを承知で言うと、「ゲーマーは運動不足で太っている」という認識が一般的ではないだろうか?
しかし「eスポーツ」のプレーヤーに限れば、一般人より健康的な体重を維持している可能性が最大で21%高く、喫煙や飲酒とも無縁だという。
eスポーツは、ビデオゲームを使った「競争的で組織的なスポーツ競技」で、競争性に乏しい娯楽ゲームとは一線を画す。高額賞金が懸かった大会も盛んで、日本の市場規模はすでに60億円を突破(2019年確定値)、全世界では1000億円を超え(20年予測値)、今後も2桁成長が期待されている。その一方で、参加選手たちの生活習慣と健康との関係が懸念されていた。
本調査はSNSや競技会で募った世界65カ国のeスポーツ選手、1772人の身体活動と健康指標のデータを解析。性別と居住地が明らかな人は半数ほどで、男性742人、女性80人、その他29人。北米や豪州など英語圏が多かった。
対象者の回答を解析した結果、eスポーツ選手のBMI(体格指数)は健康的な範囲で、喫煙や飲酒頻度はむしろ少ないことが示された。具体的には、およそ2割の選手が1日30分以上の運動を週5日以上行い、喫煙は3.7%のみで、92%が「全く吸わない」と回答。また毎日飲酒している選手は0.5%と極めて少なく「週に1回以上」が34.9%、「全く飲まない」が65.1%だった。
興味深いのは、上位ランク10%に入る「トップアスリート」ほど、競技に費やす時間が残り9割より多いにもかかわらず、有意に身体活動量が多く、BMIが低く抑えられている点だ。
座位で行うeスポーツといえど、集中力や持久力、空間認識能力を発揮する必要があり、リアルな「フィジカルトレーニング」を取り入れる競技チームは少なくない。トップ選手ほど心身の健康の重要性を理解しているのだろう。
リアルでも仮想でも、憧れのトップ選手に近づきたい気持ちは同じだ。eスポーツは、子どもたちが健康的な生活習慣を身につける環境として最適なのかもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)