2024年の国別AIランキングでの日本の順位

スイスのビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)が発表した2025年版の世界競争力ランキングで、日本の競争力は69の国・地域の中で35位だった。前年より三つ順位を上げたものの、連続で1位を記録していた1990年代前半を思えば、寂しい限りだ。
また、24年版のデジタル競争力ランキングも31位と振るわない。人材やビジネスの俊敏さで大きく劣っており、特にデジタル技術のスキルは最下位というのが主因だ。01年にe-Japan戦略を掲げ、5年後には世界最先端のIT国家になると豪語した勢いは、今や見る影もない。
24年のスマートフォン普及率は74.4%となり、すでに4人のうち3人がインターネットにつながるデジタル社会だ。同経営者オピニオン調査は、今後最も重要なビジネストレンドはAI活用だと指摘しており、デジタルのみならずAI活用を前提とした社会へと変貌していくだろう。
近年急速に進化した生成AIは、今年も話題を席巻。中国発のDeepSeekは株式市場に大きな衝撃を与え、計算能力・データ量・パラメータ数が大きいほど性能が向上するという従来のスケール則を覆した。米国独り勝ちとみられていた市場に風穴をあけた形だ。
ただし、その中身は既存のアルゴリズムに幾つかの改良を加えたにすぎない。生成AIの歴史を振り返っても、人間の知性の超越を目指した革新というより、多くの研究者や技術者が積み重ねた日々改善の努力が結実したというのが実態だ。
こうした改善・改良の作業は、本来、日本が得意とする分野のはずだ。「情報通信白書」によれば、日本のAIランキングは11位だ。指標では1位の米国、2位の中国に大きく引き離されているが、DeepSeekの事例が示す通り挽回の余地は十分に残されている。
今年5月にはAI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立した。AIの研究開発と活用を国家戦略として推進するもので、6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」も、AIシフトを鮮明にしている。リスクを恐れず人材への投資を強化し、技術者の地位向上を進められれば、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の復活も決して夢ではない。
(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)