凸版印刷の経営が節目を迎えている。紙の印刷は減少の一途をたどり、大型テレビ用カラーフィルターは縮小トレンドに入り、次の成長に向けた多角化戦略の再構築が急務だ。成否を決める競争優位は「つなげる力」と「調整力」。他社との協業でリスクを減らし、企画や事務局の請負で顧客とウィンウィンの関係を生み、事業の柱を多くしようとしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

「Shufoo!(シュフー)」という名前を聞いたことがあるだろうか。電子折り込みチラシで、最近では、タレントの山田花子がピンクのカエルの帽子をかぶってスーパーで買い物をするテレビコマーシャルを展開している。買えるとカエルをかけたダジャレ、主婦と代表的なポータルサイトのヤフーを組み合わせたようなネーミングだが、これを運営するのが凸版印刷だ。

 内容は、ユーザーがスマートフォンやパソコンの端末にシュフーのアプリ(無料)をインストールし、郵便番号で住んでいる場所を登録しておくと、毎日、その地域のチラシが「マイチラシポスト」に送られてくる。

日本最大のチラシポータルサイトのシュフー。地域を登録しておけば、毎日、チラシがスマホに届けられる
拡大画像表示

 シュフーのビジネスモデルは、ユーザーがクリックしチラシを実際に見たときに広告主に10円課金するというものだ。現在のユーザー数は月間400万人、登録店舗数は8万店と日本最大規模を誇る。広告で定評のあるリクルートも同様のビジネスを一時展開していたが、勝ち残ったのは凸版だった。

 「2001年からスタートし、主な小売りを押さえてきた。今では登録店の8割が、凸版がチラシを印刷していない小売り。他社は簡単には入れないはず」と亀卦川篤・電子チラシ事業推進部長は自信をのぞかせる。

 シュフーのビジネスには、凸版の多角化成功のエッセンスがいくつも盛り込まれている。最たるものが、顧客の悩みを解決し、ウィンウィン関係を築くことにある。広告主であるスーパーなど小売りにとっての大きな課題は、新聞離れが進み、20~50代の主婦が家庭で新聞をとっておらず、折り込みチラシを目にしなくなっていることだ。ある調査によれば26~42歳の主婦では、10人中3人しか新聞を購読していないのだという。残りの7割にどうやってチラシ情報を届けるかが、小売りにとって重要な課題だ。