パソコンのCPUメーカーとして知られるインテルと、凸版印刷グループで電子書籍流通の最大手ビットウェイ、読書SNS「ブクログ」や電子書籍作成・販売サービス「パブー」を運営するブクログ社の3社が、クリエイターや出版コンテンツを発掘・創造する目的で「あなたを作家にするプロジェクト実行委員会」を結成。投稿コンテスト「DIGクリエイティブアワード2012」(DIGアワード、DIGはDigital Index of Gushの略)を主催し、「小説」「コミック」「コラボ」の3部門で、多くの作品を募集する。応募期間は2012年8月27日~2013年1月14日。受賞者には賞金のほか、電子書籍化や、コミックについてはビットウェイ子会社であるジェイマンガを通じた海外配信などの特典が与えられる。
応募条件は、インテルが開発した「DIG作家システム」によって作品を制作すること。このシステムは、web上の電子書籍制作ツールで、初心者でも、小説のレイアウトや表紙のデザイン、挿絵の挿入などが可能なもの。コミックも、表紙デザインや目次、ページ構成などが容易に設定できる。つまり、作品を電子書籍に近いイメージでいとも簡単に作ることができる優れた執筆システムであり、応募者は、本やコミックの“カタチ”にして投稿できるわけだ。
近年のノートブックPCは性能も向上し、複雑なアプリケーションもサクサクと動かせるようになってきている。もともと、インテルがこの作家システムを開発したのも、同社製高性能チップ内蔵のウルトラブックやノートブックPCなど、マシンパワーの高い製品群のパフォーマンスを、ユーザーに実感してもらう機会を増やすためだ。インテルは以前に同システムを利用した投稿コンテストを実施した経験もあり、今回はシステムや内容をバージョンアップさせ、協力会社も大幅に増やすなどして、より大々的に展開する。
協力会社に名を連ねる企業が多種多様なのも興味深い。出版社は講談社のみ。その他は、紀伊国屋書店、SNSゲームのグリー、ネット通販のセブンネットショッピング、クリエイター養成学校のデジタルハリウッド、ペンタブレットメーカーのワコム、イラスト制作ソフト開発のセルシスなど。主催するビットウェイの桝谷稔コンテンツメディア本部長は、「国内の電子書籍市場がなかなか活性化しない中、出版社以外の異業種のマンパワーも集結・連携することで、既存の出版社とともに、電子書籍ならではの新しい出版のかたちを模索していきたい」と、その狙いを話す。
コンテストの仕組みも斬新だ。通常、こうした投稿コンテストでは審査前の応募作品は公開されないことが多い。秀逸な作品に対し、他の出版関係者が陰でスカウトするなど、“才能”を横取りされるリスクがあるためとも言われている。
それに対し、今回のDIGアワードでは、応募作品はすべて公開され、誰でも自由に閲覧できる。公開の仕方も、全編を一挙に公開、連載形式で定期的に部分公開、など投稿者がコントロール可能だ。また、ファンレター機能も付け、読者は気に入った作品があれば、作者に直接感想を言ったり、励ましたりすることもできる。