先週13日にグーグル和解案の修正案が裁判所に提出されたようです。報道された限りの情報や、和解管理者サイトに掲載された修正案本文を見る限り、対象となる書籍がアメリカ、英国、カナダ、オーストラリアで出版された作品に限定されること、孤児作品と言われる著作権者不明の著作物に関する収益配分のルールが変更されること、また、対象外となる定期刊行物の例示として「コミックブック」が明記されたことなどが目立つ修正点のようです。この結果、日本の本は「和解対象外」とされたことになり、訴訟の行方に対して右往左往する必要がなくなりました。

 ただし、すでにスキャンされた本のデータがどうなるのかについてはよくわかりません。グーグルに対して削除を要求できるようですし、これだけ騒ぎになったのだから、無断で使用することはないだろうとも思いますが、グーグルは「フェアユース」の抗弁を取り下げていないので、従前の和解案の枠組みの中で削除させたほうが、処理としては安定していたかもしれません。

 ただ、ここまでの連載で繰り返し書いてきたように、デジタルの本と紙の本との共存関係をどう構築していくのかが真の問題点であり、グーグル和解案がこの修正を経た後であっても、それに対するひとつの回答となっていることに変わりはありません。

「キンドル」日本語版の登場は時間の問題

 さて、本題に戻って「キンドル」と「リブリエ」の違いを考えていきましょう。「キンドル」のビジネスモデルについては、様々な場所で説明されていますし、まだ日本語書籍を対象としたサービスは開始されていません。

 一方「リブリエ」は3G通信機能を除けばハードウエア的には「キンドル」とあまり違いはないものの、たいして話題にならないまま日本市場からの撤退を余儀なくされてしまいました。そのため現在日本では本格的な電子書籍リーダーが存在していませんが、近い将来「キンドル」日本語版が登場することは間違いないでしょうし、「リブリエ」の姉妹機である「ソニーリーダー」の逆輸入の可能性もあるでしょう。そうすると、日本の出版界はもう一度、電子書籍リーダーが存在する環境に対応しなければなりません。その時に関係者は何を考えなければならないのか。これは歴史から学ぶのが一番ですし、幸いにして学ぶに足りる「リブリエ」の経験があります。

 ソニー「リブリエ」に対して提供される書籍コンテンツは、ソニー、講談社、新潮社が中心となって、大日本印刷、凸版印刷、その他出版社の出資によって設立された会社が開設したサイト「タイムブック・タウン」から提供される形でスタートしました。