ただ現実問題としては、「医師に処方してもらわなくても、ヒルドイドが薬局で簡単に手に入る」と誤認した消費者が「ヒルマイルド」を買うことで、「ヒルドイド」の営業に損害が発生する可能性はあります。ここが裁判で争われることになるのでしょう。

iMac訴訟で思い起こされる
「まさか」の判決

 本件に関しては、「さて、裁判所の判断はどうなるでしょうか」といった結びになるところですが、実は地方裁判所の判断を見ると、今回と似たようなケースで結構面白い前例があるので、最後にそれを一つ紹介しましょう。

 1999年、当時人気だったアップルの「iMac」と外見がよく似たソーテック製の「eOne」というパソコンについて、東京地裁が販売差し止めの仮処分を下しました。

 当時のiMacは、本体とモニタが一体化した画期的な外観デザインと奇抜なカラーリングで人気を集めました。ただ難点としては、当時のiOSは圧倒的に市場において少数派だったこと。Windowsユーザーからは「Windowsが使えるiMacのようなパソコンが欲しい」という声が高まり、そこでeOneが発表されたというのが当時の経緯です。

 実はこの裁判は、一部のプロの間で「アップルは勝てないんじゃないか?」と言われていました。理由はユーザーの間で「混同が起きるはずがない」からです。iMacを買おうとして、間違えてWindows 搭載のeOneを買う人などいるわけがありません。そうではなく、iMac的なWindowsパソコンが欲しい、比較的ITリテラシーの高いユーザーが買う商品だったわけです。

 ところがこの裁判では、「外観の類似性から消費者に混同を与え、メーカーに不利益を与える」として、販売差し止めになったのです。論理的には混同は起きなくても、実質的にiMacに損害を与えることを止めるために、裁判官が非論理的な判決文を書いたという実例です。

 その前例から類推すれば、医師に処方してもらわなければ手に入らない医薬品と普通に薬局で手に入る医薬品という、本来混同が起きる可能性がない商品に関しても、裁判所の「画期的な判決」が下る可能性はあるかもしれません。いずれにしても、かなり複雑な経緯がからんだ今回の訴訟、どうなるのか興味深く見守っていきたいと思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)