欧銀は不動産事業を展開
今回は、諸外国において銀行が一般事業に参入している事例を取り上げる。ツーウェイ規制の欧州では、フランスのBNPパリバが、子会社BNPパリバリアルエステートを通じて不動産事業に参入している。BNPパリバリアルエステートは1963年に設立された後、買収を通じて業容を拡大した。現在は、フランス、ドイツ、英国、ベルギーなど、欧州を中心に16カ国に進出し、不動産の開発、売買、賃貸、管理、運用など、網羅的に不動産事業を展開している。
同社の2019年の収益は約10億ユーロと、すでに欧州における主要な不動産会社になっている。同社は、投資家向けのサービスも提供していることから、BNPパリバグループにおいてウェルス&アセット・マネジメント部門に属する。営業面で銀行などのグループ会社に依存しているわけではないが、ドバイと香港の顧客に欧州の投資不動産を紹介するための現地オフィスの設置や、これらの投資家が遠隔地から物件を確認するためのバーチャルリアリティー技術の開発など、グループ内の他部門と連携している。
不動産事業については、スペインのサンタンデールも、17年に買収したバンコ・ポプラルの不動産子会社を一時保有していたが、不良債権の担保管理会社としての色合いが強かったため、早々に米ブラックストーンに持ち分の過半を売却している。
このほか、欧銀ではフィンテック関連の企業を買収した事例はあるものの、金融と関係のない一般事業を営んでいるケースは見当たらない。ツーウェイ規制の欧州で、なぜ銀行による一般事業への参入が進まないのだろうか。20年11月に金融庁から公表されたディスカッションペーパーでは、ドイツの例を挙げ、銀行グループはグループ全体に厳格な規制・監督が課されることから、一般事業に参入しても規制対応コストがかさんでしまう点が理由の一つとして指摘されている。