柏木:今の日本のヘルスケアのシステムだと、「知識があって行動できる人じゃないと支援が得られない」というのを医療者はもっと知ってたほうがいいと思います。社会保障制度の中で自分が積み立てているんだから、自分が本当に必要な時に介護サービスを受けるというのは権利の話なので。その権利がちゃんと守られているのかというのをアセスメントするのも専門職の役割だと思います。アセスメントして、「それってもしかしたら活用できる社会保障制度があるかもしれないから、もうちょっと詳しい人に相談しませんか」と言うだけでいいですから。

後閑:確かに自分だけで全部なんとかしようとするんじゃなくて、「それだったらそこに相談するといいよ」とつないでもいいですよね。

柏木:自分のほうから「相談してみていいですか」と聞いてもいいと思います。

一人で立っていることを周りは望んでいない

柏木:ご家族には「本人本位の支援を大事にしてほしい」と思うんです。どうしてもご家族もつらいから自分のつらさを優先してしまうのもわかるんですが、「本人本位で患者中心の医療を提供しようと思ったら、ご家族の協力も必要なんです」と伝えたいっていうのが一番。医療者自身が本人本位でないことも多いのですが、家族が本人本位の支援を阻害する構図もよくあるので、そこを理解してもらいたいなと思いますね。

後閑:患者さんのよき理解者になってあげてほしいですね。つらさを理解してくれる人がいるだけで、本人にとって希望になったり救いになったりするから。

柏木:がん患者さんやその家族だけに対するメッセージではないですけれど、僕は結構大事だと思うのは、自立してるっていうのは依存先がたくさんあることだと思うんです。迷惑をかけたくないとかそういう精神的なつらさは当然なんですが、無理して一人で立ってることを周りもそんなに望んでなかったりするというのは知っていてほしいなと思いますね。

後閑:もっと助けてって言ってほしいし、そうしたら周りも行動しやすいですもんね。

柏木:できないことはできないと誠実に言いますからね。依存先、頼れる先があるということが、自分自身が自分らしく生きるために必要なので、そこを覚えておいてほしいと思います。

まとめ
・「過ごしたい場所で過ごす」という選択を選べるように、家族と話すことを避けない
・「自分の人生を自分で考えられる力」を磨き、どう自分の人生を締め括るかを考えておくこと