「お金持ちになるにはどうしたらいいのか」という疑問にこの連載ではいろんな角度から答えを示していきます。お金持ちなら誰でも知っている秘密を明かしていきます。
その疑問の答えにたどり着くには「お金」「経済」「投資」「複利」、そして「価値」について知っておく必要があります。少し難しい話も出てきますが、今は完全にわからなくても大丈夫です。
資本主義の仕組みについても、詳しく解説していきます。なぜなら、資本主義の世界では、資本主義をよく知っている人が勝つに決まっているからです。
今後の答えのない時代において、どのように考えながら生きていけばいいのか、ということもお話ししていきたいと思います。さあ、始めましょう!
(もっと詳しく知りたい人は、3月9日発売の『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を読んでください)

コロナ リモートPhoto: Adobe Stock

仲介するだけで付加価値を生まない
ビジネスは今後廃れていく

私が社会人生活をスタートさせた1990年代は、「働くこと」に関して個々人の自由になる余地は、とても狭いものでした。その代わり、個々人が所属している組織が「終身雇用制度」や「年功序列賃金」によって、一生食うに困らない安心感を与えてくれていました。しかし時代の流れの中で、それに即した付加価値を提供できない組織は、生き残れなくなってきました。

私が新卒で入った銀行などはその典型例です。何しろ潰れましたから。なぜ潰れたのかというと、バブル経済の時に抱え込んだ負の遺産があったのは事実ですが、私は時代の流れだったのだと考えています。

「半沢直樹」というドラマがヒットしましたね。大袈裟な「顔芸」が面白くて、私も毎週楽しみにしていました。ただ、あそこに描かれていた銀行は、些か古い時代のものです。銀行が多くの企業の生命線となっていたのは昔の話なのです。今は、銀行自身が生き残りに必死になっています。どこも崖っぷちにいます。

銀行の業務は、預金を集め、それを企業などに貸し付け、さまざまな決済に対応するという3つがメインです。

でも、今の時代は「お金を貸す」ことが銀行の専売特許ではなくなってきました。「クラウドファンディング」といって、社会的に有意義なプロジェクトに対して投資や融資、寄付といった形で資金を融通する仕組みが存在しています。

決済だって、ブロックチェーン技術がさらに高度なものになれば、銀行が介在しない形でできるようになります。事実、ビットコインなどの暗号資産は、銀行を介在させない形で各種決済を可能にしています。

とても単純化した言い方になりますが、銀行の仕事は「お金を右から左に移して金利差や手数料を抜く」というものです。言い方を変えれば「お金の仲介屋」です。

皆さんも気づいているかもしれませんが、街角からどんどん銀行の店舗が減っていますよね。「半沢直樹」の時代はもう終わっているのです。仲介するのみで何の付加価値も生まないようなビジネスは今後、どんどん廃れていくでしょう。

日本が米国を駆逐した分野はいずれ
韓国や台湾、中国に追い越される

その点では、日本の大手商社もうかうかしていられないかもしれません。大手製造業だって、大変な時代を迎えています。それは1970年代の米国で、製造業がどのように衰退していったのかを調べるとよく理解できると思います。

たとえば自動車。米国は20世紀の前半に、T型フォードという自動車の量産化に成功した国です。ところが1970年代から、日本の自動車メーカーの猛追を受けて苦境に立たされました。家電メーカーも同じ運命を辿りました。

単純なモノづくりの企業は皆、日本のメーカーに駆逐されたのです。そのため今も米国で残っている企業に、単純なモノづくりのメーカーはありません。たとえばアップルだって、単なるパソコンやスマホ、タブレットなどを作っているメーカーではなく、ソフトウェアやサービスも開発・提供し、ウェアラブル端末を用いて健康分野へも参入しています。まさに付加価値の高いサービスを提供しているわけです。

米国の製造業に追いつき、追い越した日本ですが、その時代は長くは続きませんでした。もはや液晶テレビは韓国のサムスン電子の一人勝ちですし、鉄鋼メーカーなんて、数年後には日本から消えるのではないかとすら思えるくらいです。日本が米国の製造業を駆逐した分野は、いずれ韓国や台湾、そして中国に追いつかれ、追い抜かれる時が来るのです。

そうです。世界はどんどん変わっているのです。それに気づくかどうかで、皆さんのこれからの人生が、より良いものになるかどうかが決まっていくのです。今の世界だけを見ていてはいけません。より先の未来を想像して、見通す力が必要とされているのです。

参考記事
コロナでピンチにある企業がすべきこと
奥野一成インタビュー<前編>

お金持ちになるのに
必要なのは、どんな力か?

「半沢直樹」の時代は<br />もう終わっている
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)など。