「お金持ちになるにはどうしたらいいのか」という疑問にこの連載ではいろんな角度から答えを示していきます。お金持ちなら誰でも知っている秘密を明かしていきます。
その疑問の答えにたどり着くには「お金」「経済」「投資」「複利」、そして「価値」について知っておく必要があります。少し難しい話も出てきますが、今は完全にわからなくても大丈夫です。
資本主義の仕組みについても、詳しく解説していきます。なぜなら、資本主義の世界では、資本主義をよく知っている人が勝つに決まっているからです。
今後の答えのない時代において、どのように考えながら生きていけばいいのか、ということもお話ししていきたいと思います。さあ、始めましょう!
(もっと詳しく知りたい人は、3月9日発売の『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を読んでください)
「モノの時代」に求められたのは
「均質な労働力」
日本の景気がよかった1990年以前は「モノの時代」でした。世の中でモノが不足していた時代です。バブル経済で大勢の人が次々に高級品を買い求めました。洋服や家電製品、マンション、自動車、高級腕時計、宝石などが飛ぶように売れたのです。日本人の物欲がマックスに達した時代です。日本国内で生産されるモノだけでは物欲を満足させることができず、世界中からあらゆるモノが日本に集まり、消費されていきました。
大勢の人がモノを欲しがるわけですから、どんどん工場を建てて、次から次へとモノを作らなければなりません。工場を建てるためには巨額のお金が必要ですし、工場ができればそこで働く労働者が必要になります。
それも均質的で、かつ一定水準を上回る能力があり、上からの命令に従う従順さを持った労働力が求められます。労働者一人一人が皆、バラバラの考えで自分の好きなやり方を優先させたら、製品のクオリティは大きく低下してしまいます。メイド・イン・ジャパンの品質の高さは、そういう労働力が日本に揃っていたからこそ、実現したのです。
そして、そのような労働力を生み出したのが日本の教育制度です。
皆さんが高校生になるまでどのような勉強をしてきたのかを、思い出してみてください。最近は少しずつ変わってきているようですが、それでもやはり暗記学習がメインだったと思います。暗記学習で高得点を得るためには、覚えるべきことをすべて覚えて、出された問題の中から正しい解答を選び出します。そこには必ず「正解」がありました。
「モノ余りの時代」に求められるのは
「アイデア」
皆さんは自分で課題を見つけ、それを解決するための方法を考えるのが苦手ではありませんか。
それは、暗記学習を中心にした教育制度のもとで勉強をし続けてきたからです。自分で考える力を鍛えないまま大人になれば、上からの命令に従う従順な労働者ばかりになるのは簡単に想像がつきます。そういう労働者が大勢いたからこそ、日本は均質な製品を大量生産することができました。
戦後、日本は自動車、家電製品などを大量に作り、モノ不足だった日本国内でたくさん販売しました。日本国内で売り切れなかったものは海外に輸出し、外貨もどんどん稼ぎました。それが今の日本経済の土台を築いたのです。
日本が高度成長をするためにやるべきことは何なのか、その答えは誰にも明確にわかっていました。それは欧米諸国が作っている製品をそっくり真似して大量に製造し、安い価格で販売することでした。
でも、これからの日本はそういう時代ではありません。
1990年以降、モノが余るようになってきました。バブル経済が崩壊して、需要が縮小してしまったのです。
モノが余っているからそう簡単に買ってもらえなくなります。だから需要を呼び起こさなくてはなりません。1990年以降はモノが満たされたため、極めて抽象的、かつ複雑な社会課題への対応が求められるようになりました。
これはもう完全に答えのない世界です。その中で売れるものを生み出すには、アイデア勝負になります。資本と労働力を大量に投入して工場を動かし、モノを作り出すのではなく、社会の課題・問題を解決するためのアイデアを生み出した人が、世の中を動かすようになります。
こうした「アイデアの時代」に必要とされるのはどういう人間なのかということを、真剣に考える必要があります。
参考記事
コロナでピンチにある企業がすべきこと
奥野一成インタビュー<前編>
コロナの時代に求められる人材とは?
奥野一成インタビュー<後編>
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)など。