2020年はオリンピックの開催など、華々しく盛り上がる年になるはずだった。しかし新型コロナウィルスの流行で経済がストップし、多くの業界が危機に見舞われている。
コロナは一時的に沈静化したかに見え、政府はGoToキャンペーンの旗を振ったが、冬になってまたもや感染者数が急増し、先の見えない状況になっている。
そんな中で、奥野一成氏率いる農林中金バリューインベストメンツは、個人向けファンド「おおぶね」などで好成績を叩き出している。
『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなっているカリスマファンドマネージャーは、現在のコロナ下の日本をどう見ているのか?2021年はどんな年になると読んでいるのか?じっくりと話を聞いてみた。
取材/亀井史夫(ダイヤモンド社)
本当にいい会社の株価は落ちていない
――2020年、コロナで株価は一時急落しましたが、すぐに回復しました。この動きは予想していましたか。
奥野一成(以下、奥野) そもそも株価というのは、半年後であるとか1年後の利益に直結するものなのかというと、そんなことはないんですよ。株価はもっと長期の、5年先であるとか10年先の利益水準を想定しながら値段がついていきます。つまり「企業価値に対する代理変数」なんですね。企業価値というのが胴体であって、株価は尻尾なので、別に目先の利益で株価は決まるわけではないのです。だとすると、その利益を出すだけの本当の強いビジネスを持っていて、仮に来年利益が出なかったとしても、5年後に通常の利益水準に戻っていると思える会社であれば、株価は普通に戻っているわけですよね。
――コロナがこのまま数年収まらない場合、実体経済はどうなっていくと思いますか。
奥野 これはいずれ解決すると考えています。別にワクチンがあるから元に戻るとか戻らないとかの問題ではなくて、過去に幾度となく起こってきた人類とウイルスとの闘いのように、ある程度の時間をかけて常態化していくということだと思います。
でも、その中で「戻らないもの」もありますよね。また、株価というのは企業価値で決まるので、その企業価値の増大スピードというのはやはり重要です。コロナ禍をきっかけに「企業価値が増大していくスピード」が加速する業種であるとか企業というのは、おそらく存在したと思います。一方で、スピードが鈍化する業種や事業もありますよね。例えばビジネスパーソンの海外出張関連で随分収益をあげていた航空業界もその一つです。加えて、これはいつも言っていることですけど、「参入障壁がない企業や産業」というのも、今回、明らかになりました。例えば外食産業の場合、参入障壁が低いことを考えると、株価はもともと過大評価されていたということかもしれません。
「外食企業は毎年ある程度の確率で潰れて入れ替わる」という事実を、みんな認識してなかったわけです。それでも今回、色々な政策で外食産業を潰さないようにしているのは、全く間違いだとは言いませんが、いつまでも継続できる話ではありません。公的な補助は一時的な延命措置に過ぎず、結果的にその会社は長期的に見れば生き残れない可能性が高いと思います。公的な援助の資金にしても、決して打ち出の小づちではなく、将来自分の子どもや孫の代に負担を強いるわけです。