コロナ禍のイタリアで期待される
「スーパーマリオ」の経済復興
2月19日、イタリアで主要政党のほぼ全てが参加する新政権が正式に発足した。新たに首相に就任したのは、欧州中央銀行(ECB)の前総裁、マリオ・ドラギ氏である。いわゆるユーロ危機の際、ユーロを守るためには「何でもやる」(whatever it takes)というメッセージを発し、ユーロの防衛に成功した手腕を国政にも活かせるかが注目される。
コロナ対応をめぐる連立政党間の対立から1月末に崩壊したジュゼッペ・コンテ前政権を引き継いだかたちのドラギ新首相だが、新政権には保守色が強い民族主義政党である「イタリアの同胞」を除く主要政党のほぼ全てが参加することになった。つまり保守と革新のみならず、中道も急進をも含む「大連立内閣」が新たに成立したことになる。
なお、コンテ前首相が率いた第一次政権は、2018年3月の総選挙で大勝した急進左派の五つ星運動が、急進右派の同盟と連立を組むことで成立した。しかし翌19年8月に同盟が離脱、代わって中道左派の民主党が加わり第二次政権が組織されたが、今度は連立からレンツィ元首相率いるイタリア・ビバが離脱、コンテ前首相が辞任した経緯がある。
多党化が進んだイタリアでは、単独で与党を担うことができる政党が存在しない。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大という緊張した環境の下で解散総選挙となれば、政局はさらに混迷しかねず、どの政党も国民の不信を買うことになりかねない。こうした消極的な妥協の産物として、ドラギ政権は誕生したといわざるを得ない性格を持っている。
ドラギ新首相はユーロ危機の際、ECB総裁として市場と間の巧みなコミュニケーション・スキルを発揮したことが評価された。人気ゲームソフトになぞらえた「スーパーマリオ」という愛称もある。EU首脳陣との関係も極めて良好であり、これまでドイツとフランスがリードしてきたコロナ禍からの復興計画に関しても、イタリアの発言力が高まるだろう。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて欧州の景気は悪化を余儀なくされたが、感染の拡大が進んだイタリアの場合、その度合いは深刻だ。