日本は政治家も国民も
「顕示欲」がない
ジョー・バイデン米大統領と会うときに、「日本はこうした道を進む、だからアメリカとも主体的な同盟にしていく」「そのための体制をこれからつくっていくんだ」ということをしっかりと伝えるべきだと。
もっと言うと、日本の一番の問題点は政治家も国民にも「顕示欲」がないということでしょう。
――「顕示欲」ですか?
そう。昨年(2020年)の米国大統領選挙の投票率は66.7%と歴史的にも高かった。翻って日本はどうかといえば、2019年の参院選(第25回参議院議員選挙)の投票率が48.8%と非常に低い投票率だった。50%を割ったのは1995年の参院選(44.5%)以来。国民は顕示欲がないから投票にも行かない。そのため野党が政権を取ることもほとんどない。
――政治家の多くは顕示欲が強い印象があります。
それは本当の顕示欲ではない。以前、安倍晋三前首相が在任中に、彼に言ったことがある。「森友・加計問題」に関して国民の70%が怒っている、自民党の国会議員であなたにそれを伝える人はいるのかと。すると安倍前首相は「いない」と言っていた。1人もいなんだよ、そういう議員が。あなたにごますりばかりしているような無責任な国会議員ばかりでどうするんだ、このままだと日本が危ないと思わないのか、と安倍さんに伝えた。
――それを聞いて安倍前首相は何と答えましたか?
田原さんが言うことはその通りだと、そうは言っていたけどね。多分、ほかにそこまで言う人間はいなかったのだと思う。だから「森友・加計問題」がついに大きくなってしまった。
森元首相は五輪組織委の会長を
続けるべきだったか?
――東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長を森喜朗元首相が辞任しましたが、田原さんはどうお感じになりましたか?田原さんは、森元首相と共著を出版するなど親しい間柄だと記憶していますが、田原さんは任務を全うすべきだったと思いますか?
そこは権力の世界。言ったことをやらなければ「負け」なんだよね。「やるべきかどうか」というのではく、権力とはそういうもの。一度やると言ったら、必ずやらなければならない。
森さんという人物は、政治家になった時は無所属で当選した。自民党の公認はすでに満杯で「泡沫候補」扱い。そのため無所属で出馬して当選した。だから変に義理もなく誰に対しても面倒見がいい。
でも小渕恵三元首相が亡くなった時、後継をどうするか、自民党は考えていなかった。その時、自民党の議員たちが「森さんが幹事長(当時)だから、森さんしかない」と考えたことで首相に選ばれたわけだけど、それを「密室談合」だと、マスコミが騒ぎ立てた。
「神の国発言問題」だって、神主さんが集まる講演会で話した文脈の中で触れたキーワードを、ほかの話は全部切って報じられた。もう初めから森さんは悪者としてマスコミによる批判の対象となってしまったんだよね。