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新型コロナウイルスの感染が再拡大し、「第3波」を迎えている。菅政権は「Go Toトラベル」の見直しなどが出遅れ、国民の不安も高まる一方だ。しかし、安倍前首相が辞める直前に触れた「遺言」ともいえる策を実行していれば、今の混乱は避けられたのではないか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

「第3波」到来、無策で迷走する菅政権

 菅義偉首相は、観光支援事業「Go Toトラベル」に関し、感染が広がっている地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止することを明らかにした。全国の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者数は急速に増え、感染症の専門家らの「分科会」が「Go Toトラベル」の見直しを提言していた(20年11月24日現在)。

 「第3波」と呼ばれる感染拡大は、20代、30代が多かった真夏の「第2波」と違い、重症化する可能性が高い高齢者・基礎疾患がある人への感染が広がっている。家庭内感染や、介護施設、医療機関での感染が増加しているという。特に、高齢の感染者は宿泊療養施設に入ってもらうわけにはいかないため、入院患者が増加し、再び「医療崩壊」が懸念される状況だ。

 この真夏の「第2波」が過ぎ去ってから「第3波」到来までの菅政権、地方自治体の対応は、「無策」と断ぜざるを得ないものだったと考える。「第3波」が広がり始めたとき、菅首相は国民に「静かなマスク会食」を求めた。

 また、小池百合子東京都知事は会見で、「5つの小」と書かれたボードを取り出した。会食時の対策として、「小人数」「小一時間」「小声」で楽しんで、料理は「小皿」「小まめ」に喚起や消毒を徹底することを呼び掛けたのだ。

 いずれも、感染対策の徹底を訴えたものだが、経済活動への悪影響を恐れて、踏み込んだ対策を避けて、小手先でしのぐことに終始していた。しかし、結局「Go Toトラベル」の一時停止という、唐突な政策転換に追い込まれてしまった。しかも、菅首相は「停止は地方の判断で」と言い、小池都知事は「停止は国の責任」だと批判するという迷走ぶりだ。

 だが、菅政権は「高齢者・基礎疾患がある人への感染拡大による重症者の増加」という事態に対する準備をすることができたはずだ。