「お金持ちになるにはどうしたらいいのか」という疑問にこの連載ではいろんな角度から答えを示していきます。お金持ちなら誰でも知っている秘密を明かしていきます。
その疑問の答えにたどり着くには「お金」「経済」「投資」「複利」、そして「価値」について知っておく必要があります。少し難しい話も出てきますが、今は完全にわからなくても大丈夫です。
資本主義の仕組みについても、詳しく解説していきます。なぜなら、資本主義の世界では、資本主義をよく知っている人が勝つに決まっているからです。
今後の答えのない時代において、どのように考えながら生きていけばいいのか、ということもお話ししていきたいと思います。さあ、始めましょう!
(もっと詳しく知りたい人は、3月9日発売の『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を読んでください)

インフレPhoto: Adobe Stock

お金の信用力が失われた時が一番怖い

このまま日本の経済がジリジリ下がり、本当に日本の信用力に疑問符がつくと、もっと恐ろしいことが起こります。

行き着くところはハイパーインフレです。インフレとはモノの値段が上がっていくことですが、通常のインフレとは比べ物にならないほど、短期間で急激に物価が上昇する現象を指して、ハイパーインフレと称しています。パン1個を買うのにカバンいっぱいのお札が必要になるようなことが起こりうるのですね。

なぜデフレが一転してハイパーインフレになるのか?説明するとこういう流れになります。

(1)国債(国の借金)が増えすぎる
(2)日本は信用できないと感じた海外の投資家が、保有している日本円や日本の金融資産を大量に売ってしまう
(3)日本円の価値が急落し、輸入品の価格が急騰する
(4)国内のほとんどの商品の値段もその影響を受けて急騰する

日本も戦後、ハイパーインフレに襲われたことがありました。この時は国家予算の280倍という莫大な戦費を国債発行でまかなったことが原因で、終戦直後から一気に物価が上昇しました。インフレが落ち着いた1955年の物価水準は、開戦した1941年に比べて195倍くらいになっていたそうです。

ハイパーインフレは決して歴史上の話ではありません。新興国では今もハイパーインフレに苦しめられている国があります。

たとえば中南米のベネズエラでは、2018年に13万%、2019年に9585%というハイパーインフレが起こりました。同国の通貨ボリバルは完全な紙屑となり、治安は極端なまでに悪化しました。

今の日本は国と地方自治体、社会保障基金の借金も合わせると、総額で1400兆円超もの政府債務を抱えています。日本の名目GDPが平均で500兆円だとすると、名目GDP比で実に280%になります。

ちなみにハイパーインフレにつながった太平洋戦争末期の政府債務残高の対GNP比は204%なので、それをはるかに超える借金を、現在の日本の国と地方は抱えていることになります。

それでもまだこれだけ低い金利で国債を発行し続けて借金を重ね、先進国とみなされているのはなぜかというと、担税力があるからなのです。担税力とは、どれだけ借金を増やしたとしても、後々の人たちが税金などによって返済してくれるはずだということです。

これが日本の信用力の高さを担保しているのです。

ただ、これは相当に危ういと思った方が良いでしょう。なぜなら今、日本は大きなリスクを抱えているからです。

それは自然災害です。特に地震のリスクは相当に高いと思われます。これだけ借金が多い状態のまま、たとえば南海トラフ地震が起こって、大都市圏に壊滅的な被害が生じれば、その復興には100兆円くらいの資金が必要になるかもしれません。

そうなった時、どこからお金を引っ張ってくるのでしょうか。新たに国債を発行するといっても、それを世界は許してくれるでしょうか。私は「インフレが来る、円安が来る、地震が来る」とオオカミ少年のようなことを言うつもりはありません。しかし、頭の体操をしておくことはとても重要です。無用に怯える必要がなくなるからです。

参考記事
モノの値段が下がり続けると、
なぜ危険なのか?

1ドル=50円のような
円高になることはありえない

ハイパーインフレにならないとは言い切れない日本のリスク
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)など。