「お金持ちになるにはどうしたらいいのか」という疑問にこの連載ではいろんな角度から答えを示していきます。お金持ちなら誰でも知っている秘密を明かしていきます。
その疑問の答えにたどり着くには「お金」「経済」「投資」「複利」、そして「価値」について知っておく必要があります。少し難しい話も出てきますが、今は完全にわからなくても大丈夫です。
資本主義の仕組みについても、詳しく解説していきます。なぜなら、資本主義の世界では、資本主義をよく知っている人が勝つに決まっているからです。
今後の答えのない時代において、どのように考えながら生きていけばいいのか、ということもお話ししていきたいと思います。さあ、始めましょう!
(もっと詳しく知りたい人は、3月9日発売の『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)を読んでください)

GotoキャンペーンPhoto: Adobe Stock

“ツケ”を払わされるのは誰か?

日本が高度経済成長した1960年代は、年10%程度の伸び率がありました。

中国の経済成長率も今は6%程度に落ち着きましたが、2010年はやはり10%超の成長率を出していました。

経済成長率が高ければ高いほど、景気が好調ということになります。逆に、今の日本のように成長率が0.5%前後に止まっているような状況では、なかなか景気の良さを実感することができません。このまま一人当たりGDPが低迷していけば、日本は二流国に転落してしまう恐れがあります。

どうすれば良いのでしょうか。

個人消費は伸びない。企業は設備投資に消極的。こうした中で頼れるのは政府支出だけだということで、公共事業(道路や橋を造ったりすること)をもっとやって政府支出を増やせば良いのではないかという乱暴な議論が出ています。

確かに政府支出を増やせば、GDPの総額は増えます。しかし政府だからといってお金をじゃんじゃん刷ることはできませんから、公共事業は借金をして行うことになります。

公共事業を増やして一時的にGDPをかさ上げすることは可能ですが、その借金は誰が返すのでしょうか。わかりますか?

「もしかして、私たちですか?」

そうです。若い世代が返していくことになるのです。

日本はこれまで多くの政府支出を借金でまかなってきて、2020年度が終わる頃には国の借金は約964兆円にも達する見通しです。しかも、これに地方自治体や社会保障基金が抱えている借金も合わせると、総額で1400兆円を超えてしまいます。国民一人当たり約1000万円の借金ということです。

皆さんにはピンとこないかもしれませんが、例のGoTo騒動もその象徴だと私は思います。新型コロナウイルスの感染拡大によって休業を余儀なくされた旅行業や飲食業を救うため、2020年7月からGoToトラベルが、同年10月からGoToイートがスタートしました。すると何やらお得なキャンペーンが始まったぞという理解で大勢の人が群がりました。

これ、本当にお得なのかというと、全然そんなことはありません。GoToにしても各種給付金の類にしても、言うなれば自分たちの子どもや孫の懐に手を突っ込んで、お金を引っ張り出しているだけのことなのです。

このように国や地方が借金をどんどん増やして一時的にGDPを押し上げるのは偽物の経済成長であり、それを続けていると、どこかで限界を迎えてしまうのです。

参考記事
「トゥキュディデスの罠」
資本主義の世界で、「現状維持」は
落ちていくのと同じである

“GoTo”に群がるさもしい人々
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』(ダイヤモンド社)など。