景気回復すれば賃金上昇は速まる
少子化で労働力不足は顕著に

 失業者が大勢いる間は、景気が回復しても賃金は上がらない。失業者がいなくなり、さらに景気が回復すると賃金が上がり始めるが、企業は景気回復で利益が増えているので、値上げの必要は感じない。

 景気回復の初期には、それまで社内でヒマにしていた社員が忙しく働くようになるので、労働生産性が向上する。労働者が生み出す付加価値が増えるので、賃上げの原資が容易に確保できるのだ。難しく言えば「単位労働コストが下がるので値上げの必要はない」ということになる。

 しかし、労働者たちが忙しく働くようになると、それ以上の労働生産性の向上は容易ではない。一方で賃金が上昇速度を速めると、企業は値上げを余儀なくされる。しばらくは、企業間の過当競争から「我慢比べ」が行われるかもしれないが、それも時間の問題だろう。

 新型コロナ以前を思い出せば、すでに、少しずつではあるが値上げは始まっており、消費者物価上昇率は(原油価格動向等々の攪乱=かくらん=要因は多いものの、平均すれば)小幅なプラスを続けていた。

 今後は、少子高齢化による労働力不足が一層深刻化し、賃金の上昇圧力も続くであろうから、長期的にマイルドなインフレが続く可能性は十分に高いと考えておくべきである。