総額表示がスタート
なぜ「陰謀論」が根強いのか
ちょっと物価が上がったような気がした人もいらっしゃるのではないでしょうか。4月1日から消費者向けのすべての商品やサービスの価格について、税込の総額表示が義務づけられました。
これまでは、結構多くのスーパーマーケットやドラッグストア、居酒屋などが税抜き表示を採用していたので、そのようなお店をよく使う人から見れば、あくまで見た目だけの問題ではありますが、価格が一斉に1割値上げされたように見えると思います。
もともと消費税は、2004年から総額表示が義務付けられていましたが、その後7%、10%と段階的に増税されることが決まったため、値札の変更やシステム改変といったお店の負担を減らす目的で、2013年10月から2021年3月末までの期間は税込表示を必須としない特別措置法が制定されていたのです。今回その期間が終了したことで、消費者向けの消費税は「元通り」に総額表示へ戻ったというのが正しい認識です。
これは政府として、消費者に誤解を持たれないようにどちらかに統一したほうがいいという判断なのですが、そもそも2004年に総額表示が決まった経緯については、陰謀論的な話がありました。消費税は1997年に3%から5%に増税されたのですが、その少し前、細川内閣当時に7%の国民福祉税構想が打ち出されていたりしました。
「いずれ、5%の消費税もさらに少しずつ増税される計画なのではないか。それを国民に気づかれにくくするように、総額表示にしたのだろう?」というのが、当時流行した陰謀論でした。実際は7%への増税が決まった際に、総額表示が時限的に税抜きでも良い形に戻ったので、この陰謀論は邪推だったわけです。しかし後述するように、この推理は海外の事例を見る限りは間違っていないかもしれません。