海外の対応はそれぞれ違う
本当に消費は冷え込まないのか
そもそも消費税は総額表示と税抜き表示のどちらがいいのでしょうか。欧米を見ると、対応は真っ二つに分かれています。ちなみに、各国で消費税と類似した税金の呼び方は、州税、VAT(付加価値税)など呼び方が異なっていますが、本稿では消費税と表記させていただきます。
アメリカは基本的に税抜き表示です。アメリカが税抜き表示の理由は、50州で消費税の税率が異なることと、税率が総じて4~8%台と低いことが背景にあると思われます。全米展開をする小売りチェーンとしては、販売価格を税抜きで統一したほうが扱いは簡単です。 企業は店舗を展開する州ごとに、その州の税金をレジで計算する。消費者の立場でアメリカの小売店を利用しても、税率が低いせいか、税抜き表示でもそれほど不自由は感じません。
一方でEU各国は、歴史的に総額表示を採用しています。背景としては、税率が20%前後と高いうえ、国によって税率が微妙に異なることが挙げられます。さらに税率変更の回数が多い(1968年以降100回以上)うえに、軽減税率品目も多い。だから総額表示にしたほうが、混乱がないのです。欧州各国が総額表示を採用しているのは、そのような理由が背景にあるようです。
今回の総額表示への統一で小売店が悩んだのは、「これで消費が冷え込まないか」「うまく消費税を価格転嫁できる方法はないか」ということでした。とはいえ、これは一時的な問題であり、状況が落ち着けば基本的には「税抜き表示でも総額表示でもどちらかに統一してくれれば、消費者も小売店もサービス業も混乱はない」と言えるのですが、実はこの先、ちょっと違った話になる可能性があります。
それはもしかすると、消費税率がさらにこの先、20%に向けて増税されていくかもしれないという懸念です。実際、官僚や政治家が時々アドバルーンを打ち上げ、「そのようなことも将来必要だ」というようなことを言っては、国民の反応をうかがっている気配があります。消費税が未来永劫10%固定なら問題ありませんが、将来どうなるかは正直、わからないわけです。ここが、欧州の事例から学ぶことができる点です。