金融界に走ったアルケゴスショック、その舞台裏
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 元ヘッジファンド・トレーダー、ビル・ホワン氏(57)は窮地に立たされた。

 同氏の個人資産を管理するファミリーオフィス「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」は3月25日、世界有数の投資銀数行の幹部に対し、電話会議の開催を申し入れた。そこで協議する緊急テーマは、同社がごく少数の主要銘柄に多額の資金を投じ、損失が大きく膨れ上がってしまった問題だった。

 いわゆる「トータル・リターン・スワップ」――銀行が手数料と引き換えに、顧客の代わりに自己資金の数倍の取引を行うデリバティブ(金融派生商品)の一種――がその賭けの一部に用いられたため、ホワン氏による複数企業への膨大なエクスポージャーが不明瞭になっていた。

 アルケゴスが投資ポートフォリオの規模や手元資金の少なさを説明すると、参加者の間にショックが走ったと、この会議をよく知る複数の関係者は話す。そこにいた全員が数十億ドル規模の損失をかぶる可能性があったのだからなおさらだ。

 ウォール街では目下、金融危機以降最大となる一企業による破綻劇の影響について調査が進んでいる。事情に詳しい関係者によると、ホワン氏だけで10日間の損失額は約80億ドル(約8820億円)に上る。トレーダーや投資家はこれほどのスピードで巨額資金が失われたのを見聞きした経験はあまりないと話す。